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大洗女子 第64回全国大会に出場せず
第20話 全国大会で待つもの
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たが、四強以外でも戦車をインフレさせた学校もあったので、かなりグダグダなマッチングでモーレツな展開になり、客から見れば面白かった)

 秋葉原駅から「つくばエクスプレス」に乗った大洗女子の面々。
 ボックス席の一角で、みほはそう切り出した。

「だって、カードの入った箱をだれもあらためていないでしょ。
 持ち上げてもいないし。そもそも装甲板の再利用の箱だし。
 今日私は、手でかき回してから引いたのよ……」
「では西住殿。これも誰かが、というより私に電話してきた人の仕業だと?」
「……信じたくなかったけど、もうまちがいないよね」

 華はこの日、珍しく車内で何も食べていない。ペットボトルのマテ茶だけである。

「でも、今回はそれが裏目に出るわけですのね」
「だから一番いいのは謀略で陥れ、次善は連携を断つ。下策は直接戦うこと。
 ……って角谷さんが言ってた」
「角谷元会長は、本当に孫子が好きだな」

 麻子は「魏武帝註」も「十一家註」もそらで全文暗唱できる。
 もちろん言葉を知っているだけでは何もならないこともわかっている。
 ピーター・ドラッガーの『マネジメント』も似たようなものだ。

「今回の作戦は、愛里寿ちゃんと角谷さんが共同で考えたの。
 私だけでは、戦車道をたたむことしか思いつけなかったね。きっと……。
 ……試合の勝ち負けではなく、どのような結果になっても「私たち」が「勝つ」。
 私たちが決して「負けない」戦略が、もうできあがっている。
 もうこれから起こることを、私たち以外の誰も止めることはできないの。
 そう、これからだから。私の、そして大洗の戦車道が完成するのは」

 沙織は黙ったまま、車内Wi-Fiにタブレットをつなぎ、あちこちと何かをやりとりしている。そしてなにかの書面らしきものを何シートもこしらえている。
 それを見ながら、みほは複雑な微笑みを見せている。



 東京にいるみほたちより、夕暮れが一足早く訪れる大洗港区。
 桟橋にその身を静かに横たえる学園艦の舷側を、夕日が赤く染めるころ。

 大洗女子の戦車倉庫に、三年生になったツチヤを初めとする自動車部の面々が集まっている。
 この倉庫に一時だけいたTasがいなくなって数ヶ月。ここの戦車はもとの8両に戻っている。
 その中の主戦力、W号戦車D型改H型仕様とV号突撃砲F型に今装備されている主砲は、オリジナルのkwk40やStuk40といった48口径75mm砲ではない。マズルブレーキがドイツ戦車特有の二段式ではなく、筒状の太く短い鋼管にスリットが開けられたものになっている。

「意外と苦労しないでつけられたのは『意外』だったね」

 この砲、ドイツで実現した口径漸減砲Pak41は、55mm径のタングステン
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