第二章
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「俺とも行くことが多いな」
「かく言う御前さんも一人旅をするな」
「俺は用事があってだ」
そうしてとだ、トールはその大きな口で黄金の林檎を豪快に齧りながらロキに応えた。
「そうしている」
「ただ気の向くままの俺とは違ってだ」
「そうだ、本当に根無し草だからな御前は」
「俺は火だからな」
自分が司っているものはというのだ。
「出たり消えたりするしな」
「風来坊にか」
「巡るのもだ」
それもというのだ。
「当然のことだ」
「そう言うか」
「そうだ、しかしまたな」
「ああ、一緒にな」
「旅を楽しもう」
「そうしような、それで今日の肉はどうだった」
今食べた肉はというのだ、焼いた羊肉は。
「美味かったか」
「御前が焼いた肉だな」
「ああ、どうだった」
「いい焼き加減だった」
そうだったとだ、トールはロキに答えた。ロキは今はトールと同じく黄金の林檎を食べている。
「流石は火の神だな」
「火のことなら何でもだ」
「自信があってか」
「ああ、焼くこともな」
それもというのだ。
「あの通りだ」
「そういうことか」
「また焼いてやる、そしてな」
「その焼いた肉をだな」
「共に食おう」
「なら俺はその肉を清めよう」
トールはトールでこう応えた。
「俺のミョッルニルでな」
「ははは、あんたもいつもそうしてくれるな」
「食いものを清めることも忘れてはならない」
儀式としてそうしているのだ、ミョッルニルを前に出して掲げて。
「だからそれは俺に任せろ」
「ではな」
「そうしてだ」
「ああ、またな」
「飯も食おう」
「一緒にな」
二人でこう話してだ、今は食事を終えた。そうしてだった。
二人はそれからも話をしてまた共に旅に出ることになった、この時にだった。
トールもロキも旅の際荷物を持っていくがお互いに笑って話をした。まずはロキがトールに尋ねた。
「ミョッルニルと力帯は持ってるかい?」
「無論だ」
トールはそのミョッルニルと腰に巻いている帯をロキにわざわざ見せてそのうえであると答えた。
「この通りな、そう言う御前もだ」
「靴だな」
「あの何処でも進める靴だ」
水の上でも何処でもだ、ロキが持っている魔法の靴だ。
「あれだな」
「これだ」
ロキは自分の足を指し示して答えとした。
「この靴だ」
「よし、ではだ」
「後はな」
「どんな巨人が来てもな」
「恐れることないな」
「片っ端から倒してやる」
トールは巨人殺しの神だ、神々や人間を脅かす彼等が出て来たらそれこそ次から次にそのミョッルニルで退治をしているのだ。
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