第五章
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「一つ思ったことは」
「髪型だね」
「モヒカン族ですよね」
「けれどもうね」
「髪型はですか」
「見ての通りだよ」
笑ってルースに答えた、黒い短く刈ったものだ。
「もうね」
「モヒカンじゃないですか」
「大抵の人間がそうだよ」
モヒカン族のというのだ。
「もうね」
「モヒカン族でもですか」
「あの髪型じゃないよ」
「そうですか」
「服もこの通りだよ」
今度はそちらの話をしてきた。
「アメリカの服だよ」
「そうですね」
「靴もね」
それもというのだ。
「今はシューズだよ」
「靴も」
「そう、そしてね」
さらに言うのだった。
「仕事もだよ」
「それもなんだ」
「そう、ビルで働いているよ、しかもコーヒーも飲んでいて」
「それもアメリカですね」
「そう、そして好きな食べものはアメリカンクラブサンド」
まさにそれだというのだ。
「アイスクリームとね」
「何もかもがアメリカですね」
「そうだよ、もう完全にアメリカ人だよ」
「部族はカナダに行ってたんですよね」
「そして戻って来た」
そうなったというのだ。
「まさにね、後ね」
「後?」
「妻はメキシカンだよ」
つまりメキシコ系アメリカ人だというのだ、ヒスパニックの中でも特に多いルーツの人達である。
「正式に移住したね」
「ヒスパニックの人ですか」
「代々混血もしてきて」
「じゃあ何か」
「そう、もうね」
それこそというのだ。
「完全にアメリカ人になっているよ」
「モヒカン族もですか」
「そうなっているよ、まあ血は残っているよ」
そのモヒカン族のというのだ。
「ちゃんとね」
「そうですか」
「そう、それとね」
「それと?」
「後はね」
アンカスはさらに言ってきた。
「僕だけじゃない」
「他のモヒカン族の人も同じですか」
「ああ、察しがいいね」
「まあそこは」
ルースもわかると返した、実際にそうした察しのよさは備えている。
「わかりまして」
「そうなんだね、モヒカン族はニューヨークに何千人かいて」
「結構いますね」
「まあね、滅んではいなくいてね」
「それだけの人がいて」
「僕みたいな仕事に就いてるよ」
ビルの高所での仕事にというのだ。
「多くはね」
「そうですか」
「うん、そうしているよ」
「そうですか、もう完全にアメリカに入ってるんですね」
「そうさ、ネイティブもね」
「アメリカ人で」
「アメリカの中にいるんだよ」
そうなっているというのだ。
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