第一章
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浪速っ娘気質
谷四妙子は代々の大阪生まれの大阪育ちだ、だがその気質はよく江戸っ子みたいだと言われている。
「私別にね」
「江戸っ子じゃないわよね」
「大阪人よね」
「それも生粋の」
「そうよ、何で江戸っ子なのよ」
不愉快そうに言う妙子だった。
「ちゃきちゃきとか熱いお風呂入るとかお蕎麦噛まないとか」
「葛飾とかね」
「こっちはそれ言ったら西成よ」
「そっちなのにね」
「何でか妙子ちゃんそう言われるわね」
「江戸っ子みたいって」
「そういう風に」
「性格のせいだと思うけれど」
「というか性格を言ったらね」
それこそと言う妙子だった。
「江戸っ子が映画や漫画みたいに誰もが気風がよくてからっとしてるか」
「違うわよね」
「性格悪い奴だっているわよね」
「うちの教頭の味噌田みたいなの」
「あいつ自分でちゃきちゃきの江戸っ子って言ってるけれどね」
その教頭の性格はというと。
「ネチネチしてて自己中でね」
「嫉妬深いっていうし」
「嫌な奴よね」
「嫌味でね」
「そんな江戸っ子もいるわよ」
「何でか大阪にいるけれどね」
それも不平たらたらでだ。
「そういう奴もいるし」
「江戸っ子が皆からっとしてる訳でもないし」
「だから妙子ちゃんもよね」
「江戸っ子みたいって言われると」
「違うわよ」
そこはというのだ。
「私は私で、しかも江戸っ子って言われると」
「絶対に違うわね」
「生粋の大阪人」
「そうよね」
「そうよ、東京には興味がないし」
即ち江戸にはだ。
「大阪にずっといたいわ」
「大阪大好きだしね、妙子ちゃん」
「それにたこ焼きもいか焼きももね」
「どっちも好きだしね」
「大阪から離れるつもりないわよね」
「そうよ、私はずっと大阪にいるわよ」
生まれ育っていて大好きな、というのだ。
「ここから離れるつもりないから」
「これからも」
「そうだっていうのね」
「そうよ、絶対にね」
こう断言する妙子だった、とにかく妙子は大阪が好きでこの街から離れるつもりはなかった。それで大阪のあちこちを歩くことも好きだった。
だがある日だ、妙子は大阪の上本町を友人達と共に歩いている時に通りがかりの人にこんなことを聞かれた。
「あの、鶴橋には何処に行けば」
「鶴橋ですか?」
「はい、そっちには」
こう妙子達に聞いてきたのだ。
「どうしていけば」
「鶴橋の駅の方に行きたいんですか?」
妙子はその人に聞き返した、見れば旅行客らしくその右手にはトランクがある。
「そちらに」
「はい、そうです」
その人は妙子の問いに答えた。
「そちらに」
「それならです」
妙子は今自分達がいる上本町のことから答えた。
「近
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