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電気風呂
第二章

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「それからなの」
「嫌になったの」
「そうなの、それでそれからはね」
「入らない様にしてるの」
「そうよ」
 実際にというのだ。
「今だってね」
「ううん、他のお風呂は好きなのに」
「それでもよ」 
 光は身体を洗いつつ姉に話した、姉は髪の毛をシャンプーで丁寧に洗っている。
「電気風呂は駄目だから」
「私は平気だけれどね」
 こう返した姉だった。
「あのビリビリした感じがかえってね」
「いいの」
「そうだけれどね」
「ううん、何処がいいのよ」
「そこは人それぞれね」
 姉の今の返事はあっさりしたものだった。
「あの感じがいいっていう人がいればね」
「私みたいにっていうのね」
「駄目な人もいるってことね、私は最初に入ってね」
 子供の頃にだ、このことは光と同じだ。
「いい感じだったから今もね」
「電気風呂に入るの」
「ここにあるしね」
 光ににこりと笑って答えた。
「そうするわ」
「そうなの、じゃあ私は普通のお風呂に入るから」
 姉が電気風呂に入る時はというのだ。
「それじゃあね」
「ええ、その時は別々でね」
「入りましょう」
 今度は光が髪の毛を洗い姉が身体を洗う、二人共まだそれぞれの泡が残っていて髪の毛の泡も身体の泡もシャワーで一度に落とした、そうしてすっきりとしてだった。
 二人はこの銭湯ではまず普通の風呂に入ったがやはり光は普通の湯の風呂に入る、そして姉は電気風呂に入り。 
 その独特の感触を目を閉じて味わってこう言った。
「この感触がいいのよね」
「そうなのね」
「あんたが苦手でもね」
「何処がいいのかってね」
「今思ってるのね」
「そうだけれど」
 実際にという返事だった。
「その感触がいいって」
「普通のお風呂じゃ味わえない」
「そういうのないから」
 光は自分が穿いている風呂の中から姉に返した。
「というか嫌なね」
「ビリビリとした」
「そんな感触だけれど、私にとっては」
「だからそれが違うから」
「お姉ちゃん的には」
「そうよ、私がこれがいいのよ」
「ううん、姉妹なのに」
 最も近い関係と言っていい、だがそれでもとここで思った光だった。銭湯の中は結構客がいて賑やかな感じだ。
「何でこんなに違うのかしら」
「お風呂のことは」
「そう、電気風呂が好きなんて」
「他のことは大体一緒じゃない」
 姉は電気風呂の中から妹に返した。
「サウナだって好きだし水風呂だって平気でしょ」
「まあね」
「ミルク風呂とか炭酸風呂も平気で」
「それはそうだけれど」
「じゃあ電気風呂だけだから」 
 好き嫌いが分かれるのはだ。
「別にね」
「こんなに違うとか」
「そんなに言うこともないでしょ」
 電気風呂のことだけでというのだ。
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