35部分:TURN4 長官の娘その二
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TURN4 長官の娘その二
「何をするかわからなかった」
「そんなにとんでもない女だったんだぜ?」
「うむ、思い出したくない程だ」
そこまでだというのだ。
「だが何はともあれ二人は結婚できた」
「そうなったんだぜ」
「そしてだ。そのうえで帰国してだ」
「留学が終わったんだぜ?」
「いや、ガメリカにいられなくなったのだ」
ガメリカで絶大な力を持つキリング家から睨まれてはだ。そんなことができる筈もなかった。そうした事情があってだ。東郷はガメリカを離れたというのだ。
「留学は中断、そして日本に戻りだ」
「二人は結婚したんだぜ?」
「左様、その通りだ」
まさにそうだったというのだ。
「二人は幸せだった。しかしだ」
「旦那浮気したんだぜ?」
「いや、あの男の女遊びは士官学校の頃からだが」
「結婚していた頃はなんだぜ?」
「そうだ。女遊びは一切しなかった」
「信じられない話なんだぜ」
東郷の女遊びは韓国もよく知っている。かなり陸軍寄りの彼でもだ。そのことは知っているのだ。
「あの旦那が浮気しなかったなんて」
「だが事実だ。しかしだ」
「しかしなんだぜ?」
「数年前だ。奥方は台湾に旅行に行かれたが」
その時にだというのだ。
「そこでだ。宇宙事故に遭いだ」
「死んだんだぜ?」
「死体は発見されていない」
それはないというのだ。死んだという確かな証拠は。だが、だった。
宇垣はその気難しそうな顔をさらに顰めさせてだ。こう韓国に言ったのだった。
「だが。わかるな」
「宇宙事故なんてそれこそなんだぜ」
「助かるものではない」
こうその顔で言う宇垣だった。
「到底だ。だからな」
「旦那は奥さんを失ったんだぜ」
「そうだ。あ奴は何も言わないが」
だが、だ。それでもだとだ。宇垣は言葉の中にそういった言葉を含ませて韓国に述べた。
「悲しんでいるのは間違いない」
「その気持ちはわかるんだぜ」
韓国は悲しい顔で述べた。
「東郷さんにもそんなことがあったんだぜ」
「そうなのだ」
「じゃあ旦那は今一人なんだぜ?」
「いや、一人ではない」
宇垣はこのことは否定した。
「娘さんがおられる」
「そのキリング家の奥さんとの間の娘なんだぜ?」
「その通りだ。それで今はその娘さんと一緒に住んでいるのだ」
「ううん、一人暮らしだと思ってたんだぜ」
「しかしそれは違う。韓国殿は御存知なかったか」
「本当に今知ったことなんだぜ」
まさにその通りだとだ。韓国は宇垣に答えた。
「旦那も色々あったんだぜ」
「そうだ。しかし奥方がいなくなってだ」
どうなったかと。宇垣は今度は難しい顔になって述べた。
「あの男はまた女遊びをはじめたのだ」
「今みたいになんだぜ」
「わしとして
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