第二十幕:ふたつの虹の大切な夢
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るようで、本音は別の所にあるように思えたんだ。そんなつっちゃーのツレナイ態度に、次第に周りの人は話しかけなくなり、一ヶ月もしないうちに、ほぼ孤立していたかな。瞳の色が変わると言っても、慣れてしまえば、なんとも思われないという事。つっちゃーも、それを望んでいるように見えたかな。つっちゃーは、いつも一人で本を読んでいる事が多く、話しかけにくいイメージだったかな。その時のあたしは、つっちゃーに話しかけても、ツレナイ態度を取られるだけだと勝手に思ってたから、特に話しかける事は無かったんだ。
だけどある日、学校の野外授業で、街の絵を描く事になって、つっちゃーは、あたしの前で絵を描き始めたんだ。なんとなく空を見上げると、いつの間にか、大きな虹が現れていたっけ。あたしは、しばらくその虹を、ぼんやりと眺めていたんだけど、ふと、目の前のつっちゃーの絵を見ると、虹は緑色に描かれていたんだ。あたしは、これから他の色を足すのかなって思っていたんだけど、絵の中の緑色の線が少し太くなっただけで、他の色が足される事は無かった。虹としては、それで完成なのかなと思った時、他の男の子が、つっちゃーの絵を見て「なんだその虹、おい、水風の虹が変だぞ」と、からかい始めたんだ。周りの子も、その絵を見ようと寄ってきたんだけど、人が集まってきたのを拒むように、つっちゃーは絵を抱き抱え込む。後姿でも、これは辛そうだと言う事くらいあたしでも分かるので、あたしも自分の絵の中に緑色の虹をビシッと描いて、
心桜「あたしも、こう見えるんだけどっ!」
水風「え!?」
まあ、結果的に2人とも「変な虹の絵だ」と言われたんだけど、からかってきた男の子の絵が、あたしよりも下手だったので、反撃してやった。
心桜「そう言うあんたの絵は、どーなのよ? あははっ! あたしよりも下手・・・水風さんの方が、絵としてのセンスあるよ!」
あたしが他に寄って来ていた人の絵も見ようとすると、他の人は自然と去って行く・・・。
水風「天美さん。ありがとう・・・です」
心桜「いやいや。あーいうの、ちょっと許せなくてね」
あたしは、虹は七色に見えていたんだけど、この時はつっちゃーと同じ色に見えるという事にしておいたんだ。つっちゃーは、自分と同じ人がいるという事に安心した様子で、その時の笑顔は今まで見てきた愛想笑いとは、明らかに違っていたなぁ。それ以降、あたしとつっちゃーはよく話すようになったかな。だけど、あたしは、つっちゃーに嘘をついている自分が許せなくて、本当の事を話した。でも、つっちゃーは既にその事を見抜いていたようで、それでも「嬉しかった」と言ってくれた事。最初、つっちゃーはツレナイ印象だと思っていた事も謝ったら、それは気付いていなかったらしく、少しショックだったみたい・・・。
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