ソードアート・オンライン〜剣の世界〜
1章 すべての始まり
4話 救出劇と再会
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頭を下げた彼にリアは精いっぱい温かい言葉をかける。
彼は頭を上げた後、もう一人がなくなった場所へと足を進めていった。リアたちもついていくと、木の根元あたりに、彼と同じくらい消耗した円形盾とスモールソードが落ちていた。おそらく亡くなった彼の装備品だろう。黒髪のプレイヤーは、その剣を根元にさし、盾を木に立てかけると、アイテムメニューを開き、そこから“リトルペネントの胚珠”をオブジェクト化して、それも木の根元に置いた。
「お前のだ、コペル…」
つぶやき、彼は立ち上がった。地面に放置された剣たちはやがて耐久値が切れて消滅してしまうだろうが、これが彼のけじめというものなのだろう。
「もしよかったら、一緒に村まで戻ってもいいかな?」
「あ、はい。同じクエ受けてるし」
リアが尋ねると、彼もうなずいて、ともに村へと続く小径を歩く。おそらく、あまり話したい気分ではないのだろう。リアもそれを察し、村に戻るまで会話はなかった。
クエストを受けたあの民家に入り、おかみさんに胚珠を渡すと、おかみさんは顔を輝かせてそれを受けとる。そしてそれを鍋にそっと入れてから、部屋の隅にあるチェストから、赤鞘の剣を人数分取り出した。リアもβテストの時にはかなり使い込んだ剣”アニールブレード”だった。重量はスモールソードの1.5倍ほどはあるだろう。視界にクエスト達成のメッセージが浮かび、獲得経験値が表示される。
リアはそのままスモールソードと入れ替えで腰に、ツカサと黒髪のプレイヤーはストレージにそれを入れた。
なんとなく3人で鍋をかき混ぜているおかみさんを見ていると、やがておかみさんは戸棚から木製のカップを取り出し、リトルペネント入りの薬をお玉でそれに注ぐ。そのカップを持ち、せきこむ音がする奥の扉へと進む。その部屋には8歳くらいの白いネグリジェをまとった女の子がベッドに横たわっていた。顔色はとても悪い。
「アガサ、旅の剣士様が森から薬をとってきて下すったのよ。これを飲めばきっとよくなるわ」
「うん…」
アガサは小さな手でおかみさんの手からカップを受け取ると、その薬をゆっくりと飲みほした。少しだけ頬に赤みがさしたような気がした。そして、アガサは一番彼女の近くにいた黒髪のプレイヤーに、
「ありがと、お兄ちゃん」
「……………あ…………」
彼は何も答えることができずに、声だけ漏らして大きく目を見開いた。そして
「うっ………くっ……」
彼ののどから嗚咽が漏れる。そして彼はよろけると、アガサのベッドに膝をついた。白いシーツを握りしめ、また低い声を漏らす。シーツに深く顔を伏せ、歯を食いしばって嗚咽を押し殺し、その頬には雫が伝って、それはシーツに吸い込まれていた。
リアとツカサは顔を見合わせる。先ほどこの
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