巻ノ百十三 加藤の誓いその一
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巻ノ百十三 加藤の誓い
幸村主従は熊本城の城下町の中井宿を取ろうとした、だがその宿に入って少し休んでいるとだ。
宿の親父がだ、彼等の部屋に来て言ってきた。
「お会いしたい方がおられます」
「?まさか」
幸村も十勇士達も直観で悟った、しかしそれは顔に出さずそのうえで親父に対して答えたのだった。
「では頼む」
「お通しして宜しいですね」
「うむ」
そうだとだ、幸村が答えてだった。
その者が部屋に案内された、それは一人の武士だったが。
武士は幸村達にだ、こう言ってきた。
「殿が是非です」
「城にでござるか」
「夜に密かに来て欲しいと」
「密かにでござるか」
「はい」
そうだというのだ。
「それも門を使わずに」
「門を使えばですな」
「気付かれます」
つまり普通のやり方で城に入ればというのだ。
「幕府の忍の者がいるかも知れないので」
「では」
「はい、お入り出来ますな」
「無論」
幸村は武士にすぐに答えた。
「それは」
「それでは殿がお待ちしております」
武士はこう言ってだ、すぐに部屋を後にした。そしてまた彼等だけになったところでだった。
十勇士達がだ、幸村に次々に言ってきた。
「もう人をやって来るとは」
「流石は加藤殿ですな」
「我等が来ていることをお気付きではなく」
「見てもおられ」
「人をやってですな」
「呼ばれるとは」
「うむ、まことに流石じゃ」
幸村もこう言った。
「加藤殿じゃ、ではな」
「はい、今宵ですな」
「今宵熊本の城に入る」
「それも門を使わず」
「そうして中に入りますな」
「熊本城は確かに堅城」
幸村はこのこともわかっていた。
「ただ天守が見事なだけではない」
「左様ですな」
「堀は広くしかもかなり深い様です」
「城壁も高いです」
「城の造りは複雑で」
「門や櫓、狭間の造りも的確です」
「特に石垣が」
熊本城の石垣は特にというのだ。
「高くしかも反り返っています」
「上から攻めやすい様にもしておりますし」
「それを見ますと」
「実にですな」
「入りにくい城ですな」
「忍び込むことすらも」
「並の忍では到底じゃ」
それこそとだ、幸村は熊本城のその石垣のことからさらに話した。
「中に入ることすらじゃ」
「出来ませぬな」
「到底、ですな」
「右大臣様を匿われても」
「その手掛かりすら掴ませぬ」
「忍達を入れぬことにより」
「あの城を攻める、いや入り込むのなら」
並の忍がというのだ、例え忍であっても。
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