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ドリトル先生と春の花達
第七幕その四

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「見ていたんだ」
「ああ、だからですか」
「じっと見ておられたんですか」
「そうなんですね」
「うん、花と雪のこの組み合わせはね」 
 本当にというのです。
「和歌だね」
「あっ、今度和歌会しますけれど」
「先生もですね」
「参加されるんですね」
「そうですね」
「そのつもりだけれど」
 先生は学生さん達に笑顔で言いました。
「この景色を歌に再現出来るかな」
「そう思うとですか」
「景色に見惚れるにしても」
「歌を作られるか」
「そう思ってですか」
「不安になるね」
 どうしてもというのです。
「この景色を果たして和歌に出来るか」
「ううん、もうそれはですね」
「やってみるしかないんじゃ」
「和歌、まあ詩ってそうですよね」
「作ってみる」
「それしかないですからね」
「出来不出来は気にしないで」
 学生さん達は先生にこうも言いました。
「まずやってみる」
「作ってみることでえすよ」
「あれこれ不安に思っていても」
「そうするしかないですよ」
「結局はそうなんだね、和歌もかなり読んできたけれど」
 先生も皆に応えて言います。
「読むと詠むは違うからね」
「そこでちゃんと日本語が出る位ならです」
「充分ですよ」
「先生日本語の読みも見事ですから」
「ですから」
 それでというのです。
「安心していいですよ」
「もう五七五七七に入れることですから」
「季語は絶対で」
「そして自分の気持ちを詠う」
「それが和歌ですからね」
「あっ、恋を詠わなくてもね」
 先生は学生さん達の言葉であらためて気付きました。
「別にいいんだ」
「そうでもない歌もありますよ」
「和歌て幅広いですから」
「確かに恋を詠ったもの多いですけれど」
「想いを詠うもので」
「恋じゃなくてもいいです」
「今上陛下もです」
 この方のお名前のことにも言及されました。
「平和へのお気持ちを詠われますけれど」
「恋を詠ったものとばかりではないですよ」
「皇室の方々は和歌も詠われますけれど」
「そればかりではないです」
「そうだったね、いや勘違いしていたよ」
 先生もこう言うのでした。
「君達に言われてね」
「そうですか、ではですね」
「今の僕達の言葉で、ですか」
「先生もですね」
「思い込んでいたね」
 こう言うのでした。
「思い込みはよくないし」
「はい、そうしたものは駄目ですよね」
「偏見とかも」
「そうしたことは極力ない様にして」
「それで学問を進めていくべきですね」
「うん、思い込んだらね」
 先生がいつも自戒していることでもあります、思い込みや偏見は学問を曇らせてしまうということをわかっているからです。
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