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ラブライブ!サンシャイン!! Diva of Aqua
記憶
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、二人はまるでこの世の終わりみたいな表情をしていた。

 呼び出されたわけも、仕事のはずの両親がここにいる理由もわからない。そんな私に、先生は苦虫を潰したような表情で重々しく告げた。


「単刀直入に言います。椎名夜絵さん、あなたが命に関わる重度の難病を抱えていることが判明しました。正直言ってかなり深刻です」


 ――余命は、残り一年程度でしょう。


 絶句した。聞かされた宣告は、あまりにも現実味がなかった。だけど両親の今にも泣き出しそうな顔を見て、私はこれは現実なんだと悟った。

 先生は私に二つの選択肢を提示した。

 手術を受けるか。
 残りの人生を謳歌するか。

 前者は成功率が極めて低く、成功したとしても完治は望めず数年の延命程度にしかならないだろうと。その場合、残りの人生はずっと病室で過ごすことになる。

 後者は言葉の通りだ。手術を受けず、およそ残り一年とされた人生を楽しむ。もう入院する必要はない。

 その選択肢を提示されて、私はひどく憤慨した。どうして今日それを言うのかと。昨日までに難病を見つけて、私に伝えることがどうしてできなかったのか。

 知ったのが昨日だったなら、私は迷わず後者を選んだ。そして梨子のコンクールに足を運んでいただろう。

 どうして今なの。
 もっと頑張って早く見つけて、伝えてくれれば。

 そんな想いばかりが募る。もうどうしたらいいのか分からない。梨子のコンクールに行く約束を守れなかった時点で、そんなことはどうでもよかった。

 今すぐには決めなくていい、じっくり時間をかけて考えればいい。父の発言に私は頷き、返事は保留となった。決断するまでは、引き続き入院生活が続くとのことだった。


 *


 それからも私は決断することができず、ただ病院のベッドで過ごす毎日を送っていた。止まることなく進む時計の病院を、抜け殻のようにただぼんやりと眺めていた。

 もちろん学校に行くことは許されず、梨子が見舞いに来ることも一度もなかった。コンクールに行けず約束を破った私の見舞いになんて、よほどのお人好しでなければ来ないだろう。

 そうやって時間は過ぎ去っていき、季節は夏になった。余命宣告を受けてから半年。あと半年で命が尽きるのだと、私はどこか達観したような気分だった。

 窓の外から蝉の鳴き声が聞こえ始めた頃、ひとりの人物が私の見舞いにやって来た。去年の担任の先生だった。


「椎名さん、桜内さんと仲良かったわよね? 放課後よく音楽室で一緒にいたでしょ?」

「だったら、どうだって言うんですか」


 梨子の名前を聞いたのも半年ぶりだった。この半年は、なるべく彼女のことを考えないように努めてきたから。


「桜内さん、
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