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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 5
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射人先射馬(人を射んとすれば先ず馬を射よ)。ちょこまかと小うるさい蝙蝠と馬の足を折らせてもらった。――天地至万物。気を以って生ぜざる者皆無也。天地万物の理を持ちて禁ず。三戒五縄七縛、急ぎ急ぎて、律令の如くせよ!」
汎式にも帝式にもない、いにしえの呪法が放たれる。だが、これは京子にとっては意外であると同時に御しやすい術式でもあった。
不動金縛りに似ているが、気そのものを禁じて束縛する術。これは秋芳がもちいる呪禁の、持禁の術に近い。
この世界のあらゆるものは全て気を有しており、それは物も人も例外ではく呪禁とはそうした気を禁じることで刀剣ならば斬ることを、鳥ならば飛ぶことを、そして極めれば人や動的霊災であってもその存在を禁じることができる呪だ。
強大すぎるがゆえに使用者を選び、一般に広がることができなかった呪術体系――呪禁。
土御門夜光が再編成した呪術全盛の日本においても滅多に見られないレアな術だったが、あいにくと京子は秋芳と行動をともにすることで、なんども目にしている。
それゆえにあわてずに対処できた。
「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、前、行!」
臨む兵、闘う者、皆、陣を列べて前を行く。
九字を切ると同時に四縦五横に足を運び反閇を踏む。秋芳ゆずりの強力な神仙系の早九字が高廉の呪縛を透かした。
「なんだと!?」
これには高廉もおどろいた。呪力に呪力をぶつけて粉砕する。盾としてふせぐのならともかく、こうも容易く回避されるのは予想外だったのだ。
早九字。真言密教などでは『臨める兵、闘う者、皆、
陣烈
(
やぶ
)
れて前に在り』という敵を打ち破る攻撃的な呪だが、九字の呪法とはもともと神山に入る前に唱える護身の呪である。
神山、すなわち異境。幾重もの異層を超えて、ここではないどこかへと向かうための呪。
つまり早九字というのは悪鬼悪霊を祓うだけでなく、異層異界へ通じる扉を開く呪でもあるのだ。
京子は巧妙に術式を組み換え、一瞬ではあるが肉体と精神を『ここではないどこか』へと移し、みずからに害をおよぼす呪を完全に無効化してしまったのだ。
塾生レベルの業ではない。
高廉の全身から呪力がほとばしり、霊風がうなる。帆柱がきしみをあげてしなり、それに張られた帆がはち切れんばかりになびく。そんな高レベルの呪術戦による余波が消えきらないうちに高廉が次の手に出た。
「千の将兵、師に随いて行け! 万の将兵、師に従いて起れ! 千将万兵、来たりて列陣せよ。急ぎ急ぎて、律令の如くせよ!」
背中の剣を抜き放ち、それをかかげて呪文を唱えると、身体中に貼りつけてあった呪符が乱舞し、式神と化した。虎、豹、狼、熊、猿、大蛇、牛、象、鷹――。数多の妖獣と化して牙をむく。
「式神作成、
急々如律令
(
オーダー
)
!」
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