エイリアンVS陰陽師 宇宙人がなんぼのもんじゃい! 1
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星見ろ星。星読め星。星読みが星読まなくてどうすんだよ」
いきなりの剣幕に一瞬呆気にとられた京子だが、すぐに相好をくずした。この年下の十二神将は自分をはげまそうとしているのだ。
「あー、それともなに。天の川に対抗してミルキーウェイでも作ろうっての」
日本をはじめとするアジア諸国では川に見立てられる銀河だが、西洋では乳の道。ミルキーウェイと呼ばれる。これはギリシャ神話が由来で、人との間に生まれたヘラクレスに神々の不死の力を与えようと画策した大神ゼウスは妻である女神ヘラが寝ているときに乳を吸わせた。だがヘラクレスの乳を吸う力があまりに強かったため、痛みに目覚めたヘラがおどろきヘラクレスを突き放した。このとき飛び散った乳がミルキーウェイだという。
「母如礼縫亡か!? 乳時雨か!? そういうくノ一忍法的なの使おうっての、このメスミノタウロス。略してメノタウロス、さらにりゃくしてメス! このメス乳!」
「……ちょ、ちょっと鈴鹿ちゃん。いくらなんでもひどくない!? あたしそんなこと言われたの、さすがにはじめてなんだけど」
「だれも言わねーなら、あたしが言ってやらぁ、この人ホルスタイン!」
大型犬にちょっかいをかける小型犬。そんな光景を彷彿とさせる女子ふたりをよそに、春虎と夏目は星空の浪漫に思いを馳せて丘をのぼり、頂上を目指していた。
雑木林の中に踏み入る。
うっそうと生い茂る木々の天蓋に星明りも遮られ、最初は暗く、原始的な恐怖を感じたが、目が暗さに慣れてくると昼間の森とはまた異なる、幻想的な森の景色が立ち現れる。
五感が冴えわたり闇の深さが不思議に心地よく感じてくる。はじめは闇が襲いかかってくるような気がしたのに、こんどは逆に闇が自分を包んで守ってくれるような気さえしてきた。
街の明かりから遮断され、まるで世界にふたりきり。大好きな人と、ふたりきり。そんな甘い想いがわいてきた。
「……綺麗だな」
「えっ!?」
「夜の森って、こんなに綺麗だったんだ……」
「え! あ、ああ。そ、そうだね。綺麗だね、うん」
自分にむけられた言葉だと一瞬かんちがいした夏目の貌が羞恥に染まる。さいわいなことに夜闇がそれを隠してくれているので恥ずかしさに赤く染まった顔を見られることはなかった。
「し、知っていますか春虎。まだ西洋で登山が一般化していない時代から、夜の山登りは日本の伝統的レジャーだったんですよ」
「へぇ、そうなんだ」
「ええ、山がちの地方では月の出を山の上で拝む行事が盛んでしたし、宮沢賢治や志賀直哉も夜の山登りを好んでいたといいます」
かつての日本人は闇を恐れると同時に深く愛した。夜の山登りは最高のレジャーだったが、遠くの山に登るだけなく、夜桜見物や蛍狩り、花火。鈴虫や松虫、邯鄲や蜩などの奏で
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