エイリアンVS陰陽師 宇宙人がなんぼのもんじゃい! 1
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っつうの」
冬児がいらだたしげに舌打ちをした。
陰陽塾では最初の一年は座学が中心であり、歴史も学ぶことになる。
一般の教科書には載っていない占守島の戦いや葛根廟事件についても学び、新羅や刀伊の入寇など、自分の国が大昔から周辺国の侵略にさらされていたことを知って大いに憤慨したものだ。
すべてのチャンネルを変えつくしたあと、電源を切りリモコンをソファーに放り出した。
「やっぱりどこか出かけようぜ。寮と塾を往復するだけで貴重な青春時代を終わらせるなんて悲惨すぎる。豊かな見識と広い視野を育てるには行動範囲を広げるべきだって、こないだ大友先生も言ってただろ」
「渋谷区役所に就職したと思ったらどうかな」
「思いたくないって。おれに役人が務まるわけないだろ」
「陰陽師を目指す人間がなにを言っているんだい!」
「あー、そういえば現代の陰陽師って国家公務員なんだっけ」
「現代もそうだし、むかしも朝廷に仕える役人。国家公務員だろ、陰陽師は」
「それも授業で聞いたような記憶が……。むかしは霊災の修祓とかじゃなくて天体観測とかしてたんだよな」
「そう。天文と暦道は律令制時代の陰陽師が司っていた重要な学問で、夜ごとの星の動きから吉凶を予測し――」
「あっ!」
「な、なんだい春虎?」
「星だよ星。天体観測しようぜ」
「はい〜?」
「もちろんガチで天体観測するとかじゃなくてさ、いま夏目が言ったように昔の陰陽師の仕事を体験するとかそういう口実で夕涼みに出ようぜ。もちろん今夜すぐとかさすがに無理だろうから、明日以降にさ」
「それは……、たしかにおもしろそうだけど……」
言いよどむ夏目、すると――。
「話は聞かせてもらったわ!」
バタンと戸を開けてプラチナブロンドに染めた長いドリルツインテールの少女があらわれた。この春から入塾してきた、史上最年少で陰陽T種を取得した神童の異名を持つ少女。大連寺鈴鹿だ。
「そういうことならあんたらじゃなくてあたしから教員連中に言ったほうが説得力あるっしょ」
「ちょ、おま、なに男子寮に勝手に――」
「あー、うるさいうるさい。あんたらだけじゃなくあの乳女も外出できるよう、このあたしが働きかけてやるから、大船に乗ったつもりで安心してなさい。そしてあたしに感謝しなさい」
一方的にまくしたてると鈴鹿は去って行った。
「あいつ、なぁ……。そんな簡単に許可が降りるのかよ」
言い出しっぺのくせにそんな危惧を口にする春虎であったが――。
いとも簡単に許可されたのだった。
夏の夜空に数えきれない星々がまたたいていた。
春虎とともに満天の煌めきを見上げる夏目の瞳もまた、喜色に明るく輝いている。
「今夜の星はことのほか綺麗ですよ、春虎!」
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