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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲乃夢 4
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「――不忍一時之気、生出百日之情、作哭作病作冤仇、禍害臨時莫救、好個当場一忍、計人一歩存楽、舌柔比歯久存留、能忍之人有後、要知前世因、今生受者是、要知後世因、今者作者是、有心無相、相逐心生――」

 どこからか呪文の詠唱が流れてきた。音楽的な旋律をもつそれには豊富な呪力が内包されており、饕餮たちはうなり声をあげ、全身にラグを生じさせる。餓鬼たちにいたってはその強大な呪力に耐えられず一瞬で粉砕するように修祓された。

「――夫入道者多、要而言之、不出二仲一理入、二行入、天往往、地往往、理入者、謂藉教悟宗、深信舎生、鳳凰止於庭、歴草生於階、神龍見於沼、上界有三十三天、何以只有九重、清虚超妙天、是正途直上、欲界十天――」
 
 やがて青牛怪と饕餮たちも耐えきれずに修祓されてしまい、秋芳は騎乗の人から徒歩になる。その秋芳とて無事ではない、とっさに張った結界がびりびりと振動し、呪文のもつ威力のほどをうかがわせた。

「……これは、邪神悪鬼の調伏にすこぶる効果のある破魔の呪文、玉傘聖呪か! 全文で三千二百二十四字あるが、たいていの魔物はすべての文字を読み終える前に耐えられず修祓されてしまうとか」

 それは秋芳の時代には伝わらず消滅した、いにしえの呪法であった。

「いかにも、そのとおりですわ」
 紫がかった黒髪をふたつ結いにし、道服と胡服の中間のような白衣白冠の装いをした少女が輿に乗って姿をあらわす。
 玉傘聖呪を唱えていたのはこの少女であろう、全身から豊潤な霊気をただよわせていた。
 さらに輿を牽いているのは粗末な服を着た、これまた年端のいかない少女で、しかもたったひとり、両手でかついで牽いている。輿とは(ながえ)という二本以上の棒の上に人が乗る台を載せた乗り物で、複数の人間が轅を肩にかつぐ、あるいは手を下げて腰の位置で持って移動するもので、とてもではないが少女がひとりで持ち運べるしろものではない。
 つまりこの少女もまた常人ではないということだ。

(これほどまで強い霊気を持ちながら、ついさっきまで気配を感じさせなかった。これはたいした使い手だ)
貧道(あたくし)は金華山霊応洞の包道乙(ほうどういつ)ともうします」

 少女――包道乙は両手を上げて礼をした。長い袖にかくれて見えないが手を組んで拱手しているようだ。

「包道乙〜!?」
 包道乙。その名には聞きおぼえがあった。
 『水滸伝』に登場する妖術使いで、方臘とともに謀叛をおこし、戦闘ではあたりを暗闇にして天地を揺るがし、敵の周囲に巨漢を出現させて取り押さえるなどの妖術を使って相手を倒した。また百歩はなれた相手を斬ることができる魔剣を所持している。

「年代がちがうぞ、時代考証はどうなっているんだ。そもそも包道乙は男性だ、女性じゃない。……あ
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