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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲乃夢 4
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! 好吃!」と鳴く。

「ぐぬぬ、面妖な……」
「李垣、矢に気をつけろ。おまえは矢傷を負って命を失う。そのような死相が出ている」

 史実で李垣は崖山の戦いで宋朝を滅ぼしたあと、安南に出征することになる。安南とはベトナム北部を支配する陳王朝のことだ。
 そこでの戦いで李垣は膝に毒矢を受けて戦死する。
 毒がまわった李垣の足は樽のようにふくれ上がり、苦悶の末に死んだという。

「ざれごとを!」

 食器も料理も卓も袍も、すべて焼却された。
 李垣は恐いもの知らずの豪胆な将だったのでそれっきりだったが、ほかの将軍たちのなかには我が身に降りかかった怪異に肝を冷やす者も少なからずいた。
 またこのような怪異は前線から離れた場所でも起きていた。
 輸送隊が兵糧をはじめとする物資を駐屯地にとどけに来たのだが、どうも様子がおかしい。しかも物資のほとんどを失っていた。駐屯地をあずかるモンゴル人将軍のネルグイが青い顔をした輸送兵たちを問いただすと、怪異に遭遇したとのこと。

「夕暮れになり野営していると、まわりから『おいてけ〜、おいてけ〜』という恐ろしい声がするのです。声は一晩中響き、兵の中には恐怖に駆られて逃走したり、気がおかしくなる者も出る始末。朝になって恐る恐る荷車を点検すると中は空っぽで……」

 そんな馬鹿な話があるものか、兵らが物資を横領して逃亡するのをふせげなかった言いわけにちがいない。
 気の毒な輸送隊長は処断されそうになったのだが、おなじような例が何件も続き、これは偶然ではない。と、ことが解明するまでは保留となった。
 だがその駐屯地でも同様のことが起きた。
 日が落ちると周囲から「おいてけ〜、おいてけ〜」と、おどろおどろしい声が響く。

「これはたしかに恐ろしい、だがこのわしがあずかる以上、やすやすと糧食に手出しはさせんぞ!」

 ネルグイはまわりに兵を散らし声の主をつきつめようとするとともに、食糧庫の守りを固め、みずから番に立った。
 多くの兵とともに寝ずの番をしていると、厳重に封鎖された食糧庫から物音がする。まるで鼠がものをかじるような咀嚼音だったので、もしやと思いあわてて中を確認すると、異常に腹のつき出た猿のような生き物――餓鬼たちが糧食を喰い散らかしていた。
 床に積み上げられた干し肉や乾餅、小麦粉や米の入った袋に顔を突っ込んでは猛烈ないきおいでむさぼり食っているではないか。

「おのれ、この妖怪どものしわざか!」

 ネルグイはむき出しの乱杭歯で干し肉をほおばる妖怪に槍を突き入れる。
 狙い誤ることなく穂先は腹に突き刺さり、その部分が残像のようにぶれる。引き抜くとそこから腹におさめた生米がざらざらとこぼれ落ちた。

「かゆ、うま……」

 自身の身体におきた損害も気にせずひた
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