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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲乃夢 4
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して鄭彪(ていひょう)か?」
「おお、オイラのことを知ってるッスか!? いかにも鄭彪ッス」

 鄭彪。やはり『水滸伝』の登場人物で包道乙の弟子という設定の妖術使いで、戦いでは身に霊気をまとったことから鄭魔君と呼ばれた。頭上に黒煙とともに金甲の神人を出現させて相手を惑わす妖術を使い、武芸にも秀でる。

「いやもう、そういう『オイラ』とか『ッス』とか現実にありえない口調で無理やりキャラを立たせようとするのもいから、書き手の表現不足の現れだから、キャラの書き分けが大変で科白とかだれがしゃべってるかわかりにくいからって、安易にありえない口調のキャラばかり出すの禁止!」
「意味不明なこと言ってないで勝負ッス! 手合せッス! 組み手ッス!」

 鄭彪はゆっくりと輿を降ろすと、猛烈ないきおいで打ちかかってきた。
 中国武術を説明するのに南拳北腿と言う言葉がある。長江より南では手技が多く、北では足技が多いということだ。鄭彪は江南の出自ということで、やはり拳をもちいた攻撃が主だった。
 鷹爪釣手、穿心掌、上?摘星拳、虎爪絶命手、龍爪擒拿手、嘴鶴手などの多彩な手技を繰り出してくるのを右に避け左にさばき、後ろに跳んで防御する。

「なかなかやるッスね、――第一封呪、解除っ」

 鄭彪の霊気がぐんと上昇した。それだけではない。あふれ出る霊気は身につけた物にも影響をおよぼし、粗末な服装が一変する。白銀の兜、甲冑、手甲、脚絆といった戦装束に変わった。

「なんだそりゃおい、界王拳的ななにかか!?」
「かいおうけんとかじゃないッス。鄭魔拳ッス。?(ハイ)! ()! ()!」

 上昇したのは霊力だけではない。身体能力も向上し、膂力も敏捷力も大幅に上がっている。ガードしても威力を殺しきれず、受けた拳脚に痛みが残る。
 いまの鄭彪の攻撃はボクシングのジャブにストレートの威力が込められているにひとしい。

(呪術者を相手するにあたって呪文の詠唱や集中をさせないよう問答無用の肉弾戦をしかける。まぁ、基本だな。俺もよくやる手だ。だが、いかんせん粗い)

 科学にせよ医療にせよ、人の世の技術というものは日進月歩だ。武術という技術体系もまたしかり。
 かの大山倍達が健在の頃の極真空手の訓練動画を見ると、正拳突きのさいに肩が左右に揺れている。これでは重心が安定せず、強烈な一撃はくり出せない。だが当時はそれが常識だった。『重心の安定』や『全身の運動エネルギーを一点に集める』という概念はあったかも知れないが、それを実践する動作がだれもが使える技術として確立していなかったのだ。
 実戦を謳った空手でさえこれだ。
 武術とはより効率よく人体を動かす科学技術であり知識である。
 八〇〇年前の武術は秋芳の生きていた時代よりも洗練されておらず、無駄が多い
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