夜虎、翔ける! 3
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ォォォっ!? ち、力が、力があふれてくるっ、あふれすぎだッ!」
あわてて丹蛭から手を放そうとするもまるで自身の骨肉と化したかのように離れない。
「うぉぉぉぉぉぉッッッ!! は、はなれろッ! 破裂する! する! み、み、みなぎりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「まったく、とんだYSBだな」
「な、なにぃぃぃ!? YSBとはなんだぁぁぁっ?」
「(Y)欲ばり、(S)すぎだ、(B)馬鹿」
「DAIGOかよ! ぶべりゃ!」
地州の肉体は膨張し、爆ぜた。それが多嶋家に生まれた呪術の麒麟児のあっけない最期だった。
「だから言っただろ、龍脈の力は人の手にあまるって」
その龍脈。堰を取り払われた霊気の奔流はいまだ衰えず、ますます勢いを増して荒れ狂っていた。火山が噴火したかのような霊気に巻き込まれれば、ただではすまない。
「――高天原天つ祝詞の太祝詞を持ち加加む呑んでむ。祓え給い清め給う――」
最上祓いの祝詞を口にし、パンと柏手を打つ。
呪力をのせたその響きであたり一帯の霊気を鎮静化させた。だがこれはあくまで応急処置にすぎない。きちんとした儀式で龍脈を鎮めなければ、龍脈はふたたび奔流と化して周囲に甚大な被害をおよぼすだろう。
「龍穴を抑える必要があるな」
「春虎様!」
飛車丸が飛ぶような勢いで駆け寄ってきた。怜悧な美貌を朱に染めている。よほどいそいで来たのだろう。
「もうしわけございません、地州のやつめを逃してしまいました」
「やつならたったいまパンクして果てたよ」
「なんと!」
「角行鬼と先輩は?」
「地州の打った式神を駆逐するのに手間取りましたので……、すぐに追いつくかと」
「そうか、合流したらすぐに龍穴。真森学園の旧校舎にむかう。この龍脈の暴走を鎮めるんだ」
工場の火災にくわえてその直後に起こった地震のため街中は騒然としていた。春虎たちが真森学園に駆けて行くのを見咎める者はだれひとりいなかった。
旧校舎の裏山の一画が地震によって崩れ、そこから間欠泉のように霊気が噴き上がっていた。
竜穴だ。
目的の場所へとむかうのにわざわざ部室の地下道を利用する手間がはぶけた。
よみがえった龍脈の気にあてられて、朽ちていたはずの巨木が隆々と屹立し、いくつもの赤い実を実らせていた。
「こんばんは、夜虎君」
「平坂……」
おさげ髪に黒縁眼鏡の少女、平坂橘花がそこにいた。
「平坂、おまえこんなところでなにやってんだよ。あぶないぞ、はやく家に――」
「視えるわ、その人も飛車丸さんとおなじで、夜虎君の護法ね」
平坂の視線ははっきりと角行鬼にむけられていた。
「おまえ、見鬼だった――。いや、なったのか」
「ええ、そう。たった
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