夜虎、翔ける! 3
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「なんて火力だ……」
「ふっふっふ、いまのは不動明王の火界咒でも火天の真言でも火之迦具土神の炎でもない。ただの火行符だ」
「なん……だと……」
「いまの私の霊力で火界咒を唱えたらどうなるか。さしもの北辰王も消し炭ひとつの残さず地上から焼失することだろう。――ノウマク・サラバ・タタギャテイビャク・サラバ・ボッケイビャク――」
火焔の渦が生じ、工場跡全体を飲み込んだ。大地はたちまち赤熱するマグマと化して、集熱地獄の様相を見せた。
「くっ、――カンマン・ウンタラタ・ビギンナン・サラバ――」
すかさずさきほど工場の火災を消した逆さ真言を唱え、襲いくる炎熱を無効化する。
「ほほう! これはこれは、異形なれど見事な業。さすがは北辰王夜光。だがいまの私を制することなどできんぞ、あとからあとから力があふれ出てくるわ!」
その言葉通り地州の身体からは龍脈からの無尽蔵な気が流れ込み、膨大な量の呪力を惜し気もなく使っては力まかせに火界咒を展開してくる。
立花自動車工場だった場所はふたたび、業火の坩堝と化した。
「くそっ、龍脈の力、マジにとんでもねぇな!」
もはや人のあつかう呪術のレベルを超えている。一〇〇人や二〇〇人の陰陽師が一堂に会しておこなわれる大呪法――たとえば大元帥法や大威徳法のような儀式呪法でもここまでの強さはないだろう。
まさに自然の力そのもの。
春虎は大海の荒れ狂う大波に翻弄される木の葉にでもなったような気分になった。
地州の火界咒が春虎の逆さ真言による消火の結界を徐々に蝕む。
「だが、やつのあの力。そう長くはもたない!」
春虎の目には地州の身体が破裂寸前の風船のように視えた。人の身にあまる力を考えもなしに吸収すればどうなるか。想像に難くない。
「どうした、もうおしまいか。あと少しで消し炭になってしまうぞ。もう少し気張ったらどうだ。ふはははははっ! ……この地州、もはや天下一。たとえ十二神将がたばになってかかってきたとしても、いまの私には敵うまい! 当代最高と言われる倉橋源司も、当代最強と謳われる宮地磐夫も、この私の足もとにもおよばぬのだっ!」
かつて春虎は陰陽庁庁舎でさわぎを起こしたことがある。そのときに庁舎を丸ごと呑みこんだ宮地磐夫の強力な呪力を目撃していた。たしかにいまの地州の火界咒はあのときの宮地以上だと言える。だが――。
「宮地さんはおのれ自身を高めてあそこまでの力を身につけたんだ。地州、借り物の力には限界があるぞ」
「ふははははぁっ、負け惜しみとは、かの大陰陽師も地に落ちたな。夜光よ、私を否定するおまえなぞ、私の創る新時代には必要ない。この場でおとなしく朽ち果てるが――ぐぉ!?」
地州の身体に異変が生じた。
「なん、だこれは……。フ、フ
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