夜虎、翔ける! 3
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のチート攻撃をことごと吸収・拡散し、地州の身には痛手らしい痛手をあたえられない。
「ひふみよいむね、こともちろらね、しきるゆいとは、そはたまくめか!」
飛車丸の引いた呪力の矢が何本も射られ、さらに狐火による追撃もくわわる。
前述のとおり式神の攻撃=呪術であり、ことさら呪文詠唱を必要とする呪術をもちいる必要はないと思うかもしれないが、これは一種のからめ手からの攻めであり、相手の防御術式の間隙をぬっての攻撃にほかならない。
「ハッ!」
だが地州のふるう妖刀丹蛭は飛来する呪力の矢や炎をことごとく打ち払う。
「まったくやりづらい相手だぜ」
隻腕に秘められた力。相手の魂に直接害を与える鬼の手による攻撃も糸に込められた霊力よって阻まれている。こと防御力にかんしてはいままで戦ったどの敵よりもかたい。
「わが常世神の霊糸に防げぬものなどない、たとえ対戦車ミサイルの直撃を受けてもびくともせぬわ!」
「悲しいぜ、俺たちはたかがミサイルとおなじ評価かよ。――飛車丸、ちょいと大声を出す。この部屋の真ん中を境に遮音できるか」
「なに? ……そうか、わかった! 阻め、空。閉ざせ。急々如律令」
飛車丸が呪を唱えると同時に角行鬼が牙をむく。
普段は糸のように細められている双眸が獰猛な光をやどして大きく見開かれる。短めの金髪がざわりとのびて婆娑羅髪になり、高濃度の鬼気が体内にみちて、二メートル近い巨躯がひとまわりふたまわりと、内圧に押されるようにふくれあがる。
そしてそのひたいに禍々しい一対の角が生まれた瞬間、一気に駆けた。
相撲取りのぶちかましの衝撃は二トンともいわれるが、鬼のぶちかましはその比ではない。
最高速度で走行する大型トラックの直撃にひとしい体当たりをまともに受け、地州は壁に吹き飛ばされた。
だがダメージを受けたのは攻撃したほうだった。地州に組みついた角行鬼の全身が明滅し、大きくぶれる。ラグだ。
衝突のさい、地州は外側をおおう糸を硬質化してのばし、刃の鎧を形づくったからだ。鋭い刃先は衝撃と重なり、頑強な鬼の肉体をずたずたに切り裂いた。
「ふっ、バカのひとつおぼえの力押しなど無駄だというのがわからないのか。この霊糸はあらゆる衝撃を吸収し、あらゆるものを切り裂く。攻防一体の常世神の御業にすきはないぞ!」
「ほう、ならこいつはどうだい」
獲物に喰らいつく獣の笑みをうかべ、牙もあらわに咆哮をあげる。
「哈ァァァッッッ!!」
慢心と余裕の笑みを浮かべて霊糸をあやつっていた地州の表情がまたたく間にくずれ、苦痛の叫びをあげたが、その声は角行鬼の雄叫びによって完全にかき消されていた。
音響兵器というものがある。指向性のある音波を放つことにより対象物を破壊したり
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