暁 〜小説投稿サイト〜
いろいろ短編集
久遠の記憶、憧憬の景色。
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 いよいよ、インターハイの決勝、その中堅戦が始まろうとしていた。


 いつもより早めに控え室を出て、私は誰もいない決勝卓で座っていた。


 これから始まる中堅戦。三年間の集大成。
 その戦いを想像して胸を躍らせながら、私にはもう一つ、楽しみがあった。


 昔に出会った、一人の少女。
 彼女と三年ぶりに、会えるのだ。


 テレビで何度も見てきたけど、その姿はあの頃とは見違えるほど可愛くなっていた。


 きっと彼女の方は、私のことなんて覚えていないだろう。


 だからこれは、私だけの楽しみ。




 目を閉じ、当時の記憶を呼び起こす。




 それは、私が中学三年生の時。




 初めて訪れた地で出会いを果たした。




 一人の少女との、記憶。




――――――


――――


――




 両親が離婚した。
 最後のインターミドル、県予選最中の出来事だった。

 以前から両親の夫婦仲は良好とは言えなかったが、あまりにも突然の事後報告に気が動転した。
 インターミドルどころではなかった。


 大会に行かず両親を説得したが、二人の答えは変わらなかった。


 私は最後にひとつ、ワガママを言った。



 ――最後に家族三人で旅行をしたい。



 両親は、私のワガママを渋々ながら承諾してくれた。


 お父さんは、有給をとってくれた。
 お母さんは、色々と計画を立ててくれた。


 そして、夏休みが明けたあとの平日。


 私は学校を休んで、家族旅行に出かけた。




***




 旅館に来ても、両親は飽きもせず口喧嘩をしていた。
 これで家族で過ごすのは、最後になるのかもしれないというのに。


 私は口論の板挟みとなって、居心地が悪かった。
 それでも、この家族旅行を楽しい思い出にしようと、私は二人の仲裁を図った。


 結果は、ダメだった。
 お前には関係ないと一喝され、完全に心が折れてしまった。


 もう私達は、家族ではないのだと。
 全く関係のない、赤の他人なのだと。


 そう言われているような気がして、私は喧嘩する両親のもとを去り、知らない土地をあてもなく駆け回った。


 一人になりたい。
 その一心で、人のいない方に向かってずっと走っていた。


 ようやく人っ子ひとりいない公園にたどり着き、そこの芝生でしばらく寝そべった。


 今はもう、何も考えたくない。
 ただボーッと、真っ青な空を眺めていた。


 空はこんなにも平和な色をしているのに、どうし
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