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国木田花丸と幼馴染
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「……うしっ、やるか」


 俺もあと少し宿題を頑張ろう。柄にもなく、不思議とそう思ってしまった。





「ふぅ……終わったずら」

「えっ、もう!?」


 それから三十分。マルはグーッと身体を伸ばし終えると、机の上に広げていた宿題をいそいそと片づけだした。

 そしてマルは、なにやら別の教材を机の上に広げていく。それは学校の教科書ではなく、初めて目にするものだった。


「マル、なにそれ?」


 気になったので聞いてみる。


「ん? ああ、これは受験勉強ずら」

「受験……」


 その言葉がずしりと重く俺にのしかかった。俺たちは中学三年生、もうすぐ高校受験が控えているのだ。


「そうだよな。俺たち今年、高校受験だもんな」

「うん。だからハルくんも、遊んでばかりじゃなくて真面目に勉強したほうがいいずら」


 そう言ってマルは教材に視線を落とし、さっきまでと同じように勉強を始めた。

 もしかして、マルはこのままだと高校受験に失敗しそうな俺を心配して、今日こうして俺の家にやって来たのだろうか。

 マルの思惑は俺にはわからないが、このままじゃいけないと強く感じた。マルの言う通り、そろそろ真面目に勉強に向き合わないといけないのかもしれない。

 毎日が楽しければそれでいいと思っていた。嫌なことから目を逸らし続けていても、楽しければそれでいいって。でも、いつかは嫌なことに向き合わなくちゃいけない日がやってくる。

 後回しにすればするほど、そのツケは大きくなっていく。だから、逃げるのは今日で終わりにしよう。


「マル、ありがとな」

「ずら? ハルくんどうしたの突然」

「いや、なんでもない」


 俺は机に広げた宿題を再開した。決意が変わっても勉強が不得意なのは変わらない。だけど、これからは少し真剣にならなくちゃいけない。

 宿題は相変わらずわからないところが多いけれど、これを乗り越え、受験も乗り越えれば、きっと今までのような楽しい高校生活が待っているに違いない。


「……そういえば、マルはどこの高校を受験するとか決めてるのか?」


 マルがどこの高校を志望しているのか、俺は全然知らなかった。マルの学力だと、偏差値の高い高校を志望しているのかもしれない。もしそうなら、かなり必死に勉強しないとマルと同じ高校に通えなくなってしまう。


「あれ? ハルくんに言ってなかったずら?」


 首肯する。その様子だと、マルはどこの高校を受験するかもう決めているらしい。


「ルビィちゃんがね、お姉ちゃんと同じ高校に行きたいみたいなの。マルもルビィちゃんと一緒がいいから、同じところ受けることにしたんだ」

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