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国木田花丸と幼馴染
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やられていただけなのかもしれない。


「涼しいずら〜」


 机を挟んだ向こう側、ワンピースの胸元をパタパタと扇ぐマル。俺はマルから視線を逸らした。無防備なマルのその仕草は、きっと無自覚でやっている。俺がマルの幼馴染じゃなかったら、どうなっていたことやら。


「ハルくん? どうしたずら?」

「あ、いや……」


 俺の様子がおかしかったのか、マルが尋ねてくる。そんなことを聞かれても、返答に困るというものだ。ここは素直に忠告しておいたほうがいいのか、それともなにも言わないでおくのか。

 迷った末に俺はマルに忠告しておくことにした。


「マル、ひとつ言っておく。男の前でそう胸元をパタパタするのはやめておけ。色々と見えそうだぞ」

「あっ……わかったずら」


 俺の言葉を汲んだマルは、それ以上胸元を扇ぐのはやめた。その様子を見ると、どうやら無自覚でやっていたようだ。

 マルはあっけらかんとしているが、俺のほうは少しばかり気まずい。いくら幼馴染とはいえ、マルは女の子なのだ。


「そういえば、今日はどうして俺んちに来たんだ?」

「それはね、えっと……」


 話題を変えようと俺はマルに尋ねた。するとマルは、持ってきたカバンの中をごそごそと漁り、なにかを取り出して俺に見せてきた。


「これずら!」

「そ、それは!?」


 マルが見せつけてきたものは、俺にとって考えられないものだった。


「夏休みの宿題!?」

「ずら。ハルくんはいつも宿題を後回しにして、マルに見せてもらおうとするずら。だから今から一緒に宿題をするずら!」


 満面の笑顔でマルは宿題を机の上に広げていく。どうし今から宿題を始めようというのに、そんな楽しそうな顔をしているのか、俺には到底理解できそうにない。


「さあ、ハルくんも宿題を出すずら」

「い、嫌だ! 俺は宿題なんかしたくない、遊びたいんだ! せっかく夏休みなんだし……そうだ! マル、一緒にゲームやろうぜ!」

「ハルくん」

「……はい」


 結局マルに押し切られ、俺は泣く泣く夏休みの宿題を始めることになった。鬼教官か、俺の幼馴染は。





「も、もう勘弁してくれ……」

「ダメずら。このままだとハルくん、いつまでたってもやらないずら」


 夏休みの宿題を始めてから一時間、俺の脳は疲れ果て、もう限界に達していた。


「それは……そうだけど」

「なら、がんばるずら」


 マルはすらすらとペンを走らせていく。本当に真面目に、そして楽しそうに勉強をする幼馴染だ。

 宿題に熱中するマルを見ていたら、その熱にあてられでもしたのだろうか。



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