自己ベストずら
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
ルビィの一件からおよそ一週間が経った。あれ以来、ルビィは以前に増してよく喋るようになり、よく笑うようになった。マルもルビィの変化には気づいている様子ではあるが、何があったのか聞き出すようなことはせず、俺たちは楽しい日々を過ごしていた。
そして今日は水泳大会の当日。全国大会の地区予選ということで、日々水泳に励んでいる近隣の中学生たちが、ここ『沼津グリーンプール』に一同に集結する。
この大会に向けて、今日まで練習を積み重ねてきた。あとは後悔のないよう、全力で泳ぎきるのみ。
観客席にはマルとルビィも駆けつけてきてくれている。今日の大会のことを二人に話すと、二人とも見にきてくれるとのことだった。
マルは俺が大会に出場するときには冷やかしなのな、一人で見にきてくれていた。だけど今年はルビィも一緒だ。冷やかしなのか、それとも何か別の理由があるのか。どちらにせよ、見てくれている人がひとり増えた。二人のためにも、今日の大会は精一杯頑張らないと。
大会の会場はいつも練習で使っている、沼津グリーンプール。慣れ親しんだプールサイドを歩いていき、あらかじめ伝えられていたレーンの前に立つ。
『続いて、榎本陽輝くん。中学三年生』
場内アナウンスで名前が呼ばれる。ピンと手を突き上げて自己主張をする。審判の笛が鳴ると、それを合図に俺を含め選手たちが一斉にプールに入水する。
俺が出場するのは背泳ぎの100メートル。全8レーンのうち、俺が泳ぐのは一番端の第8レーン。
大会とはいっても、これから行われるのは地区予選。全国大会まで勝ち進むには、まずはこの予選レース全体で上位8位までに入らなければならない。
今から行われるのは地区予選決勝進出者を選抜する予選。その予選を勝ち上がり決勝へと進み、更にそこで上位に入らないと、全国大会には進めない。
プールに入水した俺は、専用のグリップに両手をかけ、更に壁に足をかける。そうして、レースの準備が整った。
『よーい』
グリップにかけた腕の力を使って、身体を壁際へと引き寄せる。そして――。
――パンッ!
号砲の音を合図に、背泳ぎ100メートルのレースが始まった。
***
大会の全日程が終了した。施設の外へと出ると、真っ赤な夕日が正面に見えて眩しい。思わず目を顰める。なんだか哀愁を感じてしまう雰囲気に、思わず乾いた笑みが漏れた。
「ハルくん」
背後から声がした。振り向くと、そこにはマルとルビィが立っていた。二人ともどこか困惑したような表情を浮かべている。おそらく、俺にかける言葉が見つからないのだろう。
嫌な沈黙が続く。そんな空気を破って言葉を
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ