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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 3
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いやしないよ、だいたいみんな創作作品から入って好きになるもんさ。暗記教育なんて勉強嫌いを量産するだけだね。試験では辞書でも年表でもインターネットでも好きに使わせたらいい、それを使いこなすのもまた立派な能力だしな」
「あ――」
「うん?」
「ええっと、いつだったかお父様が『国語の力とは文法や漢字を暗記する能力ではない。辞書を引こうとする意欲と辞書を使いこなすのが国語の力というものだ』みたいなことを言っていたのを思い出したの」
「ほほう、倉橋長官はなかなかわかっているな」
「……ふふっ、なんだかあなたとお父様って似てる気がする」
「えー、なんか前にも言われた気がするけど、そんなに似てるか〜?」
「ええ、性格とか容姿とかじゃなくて、雰囲気っていうの? ただよう気配がなんかそんな感じなのよね」
「なんだか年寄りじみてるって言われてるようでいやだなぁ。父親なんてじじむさいからいやだ」
「じゃあ『お兄様』て呼んであげましょうか」
「俺に妹属性はない。男がみんな百合好き、妹好きだと思ったら大まちがいだからな。それに最近じゃ『お兄様』てのは揶揄するときにも使われるし」

 ふたりはひとしきりおしゃべりしたあと、ふたたび宋のため奔走せんと下界に降りた。





 夜。
 あれからもほうぼうを駆けずりまわり、宋人たちの厚生の上昇に努めたあと、切り拓いた山々の一画にささやかな道観を建ててそこに寝泊まりすることにした。
 部屋の中は床位(ベッド)が二つに四角い卓と二つの椅子、箪笥と本棚や水甕などのほかにもいくつかの雑貨が置いてある。中国は唐の時代までは床に座る生活様式だったが、宋代になると椅子に座るようになっていた。これらの家具はいずれも人々を助け、手伝いをしたさいにお礼としてもらった物だ。
 天上のあたりに呪術で灯された火が浮いて、快適な熱と光をはなっていた。
 その光の下、秋芳が椅子に座り一冊の本を読んでいる。

「お風呂、あいたわよ。あなたも入ったら」
「……ああ」
「ずいぶん熱心に読んでるわねぇ」

 秋芳の肩口に京子の顔がおかれた。風呂上りの湿った髪が頬にあたり、果実を思わせる芳香が鼻腔をくすぐる。
 仏教の沐浴の影響で風呂に入る習慣自体はあり、寺院には温堂や浴堂という入浴施設が存在したが、この時代の中国には内風呂というのはあまりない。だがそこはお風呂大好きな日本人の二人、専用の浴室をしっかりと用意したのだ。
 風呂上りの女子の良い匂いを嗅がされた男子がおとなしく読書など続けられるわけがない。
ましてや背中には温かくて柔らかい二つのふくらみが押しあてられている。
 猫にまたたび、かつおぶし。馬にニンジン、河童にキュウリ、蛇に鶏卵、餓虎に野兎、秋芳に京子の髪、秋芳に京子の瞳、秋芳に京子の頬、秋芳に京子の唇、秋
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