夜虎、翔ける! 2
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や発煙筒を投げつけたり、ゲバ棒を振り回して平和な日本国の治安をさんざんにおびやかしていた諸岡である。
昔日の闘志がよみがえるとテキストを投げ捨てて教室にあった九〇センチ定規をもってゲバ棒に見立てて振り回し、生徒たちを打擲した。
「精神注入―ッ! 大学解体! ナンセーンス!」
「あイタっ!」
「どうだ、思い知ったか腐ったミカンどもめ! ひとりのこらず統括してやる!」
大喝する諸岡だったが生徒の輪はほころびを見せず、ジョージ・アンドリュー・ロメロの映画に出てくる動く死体のような緩慢な動きで反撃する。
高齢だが無駄に丈夫な諸岡と多勢だが動きのにぶい生徒たち。教室内で取っ組み合いの乱闘がはじまった。
このとき生徒たちのなかには驚愕し、恐怖と狼狽の表情を浮かべて自分の意志とは無関係に身体が動いているとうったえる者がなん人かいたのだが、諸岡は気にもとめなかった。
似たような騒ぎは諸岡のいる教室のみならず、真森学園のいたるところでおきはじめた。
「なんでも質問してちょうだい」
「矢吹健太朗に『てんで性悪キューピッド』をリメイクして欲しいんですけど、どこにいくら積めばやってくれるんでしょうか」
「なんでもと言ったけど、そんな質問は受けつけないわ」
「大人はうそつきだ!」
「いいえ、大人はうそはつかないわ。まちがいを犯すだけなのよ」
「なにしれっとジョジョの作者の名言をパクってるんですか」
早乙女涼はすっかりこの学園になじんでいた。
一瞬で、するりと溶け込むことができた。
これは彼女が隠形上手であることと無関係ではない。気配を断ったり、物理的に透明になるのも穏形ではあるが、まわりの空気を読みとり、同化することこそ穏形術をあやつるうえでもっとも基本的かつ重要な要素なのだ。
実力者ならばどんな場所であっても人目を避ける穏形が可能であろうが、真に「巧い」穏形というものは、たんに気配や霊気や姿形を隠すだけでなく、おのれを周囲になじませるものだ。まわりの空気を把握して自分なりに解釈すること。それこそが穏形術の基本中の基本であり、早乙女はそれを得意としている。
早乙女涼はロリ先生として生徒たちに受け入れられていた。
「みんなはお金が欲しい? 欲しいわよね。金蚕蠱っていう蠱毒を使えば他人の財産を自分のものにできちゃうのよ。これは食錦虫ていう蚕の一種を使った呪術で――」
「秦楚斉燕趙魏韓。戦国の七雄をおぼえるにはこの順序が一番よ。西から反時計回りにつらなっていて、だいたいにおいて強い順番になっているわ」
「三国志の呉の国ってわりと呪術っていうかオカルトめいた逸話が多いのよ。孫策をとり殺した于吉は有名よね。この人のほかにも王表って人がいてね、羅陽という地にいた自称神様で、姿は見えないけど言葉を
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