夜虎、翔ける! 1
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つつ、こうして講師と生徒として学園に入ることに成功したのだ。指名手配中ということもあり、さすがに土御門春虎という本名は名乗らず堀川夜虎という偽名をもちいることにした。堀川というのは安倍晴明の邸があった京の土御門通りの近くにあった大路からとってきている。
「呪術講師としてひとこと。この学園は風水的に良い土地に建っているわ。移転なんて愚かな真似はおよしなさい」
「おい、なんだおまえら! いきなり出てきて口をはさむなっ!」
たまりかねて木内がわめいた。だが春虎たちは意にかいさず吉良と会話を続ける。部屋の中でのやりとりは外にも聞こえていた。さらに土足をテーブルの上に乗せている様を見て、この両者が善良な市民ではないと判断した。そのような者に対して守る礼儀などない。
まして初対面の人に『おい』『おまえ』呼ばわりするような輩は畜生と同類である。人間が相手をしてやる必要はない。
春虎たちが木内を無視して吉良とやり取りを交わしていると、木内がさらに大声でわめき立てる。
「おれたちは多嶋先生の代理でここに来ているんだぞっ、邪魔をするんじゃない。いいかよく聞け、この街では多嶋先生の許可がなければ口をきくこともできんのだ。おぼえておけ青二才どもっ」
「そのかわり許可があれば狗や豚でも日本足で立ってスーツを着てタバコを吸って人の言葉をしゃべってもいいみたいね」
早乙女の皮肉を瞬時に理解できるほど木内も植田も言語的文章的センスともに恵まれていなかった。植田はふた呼吸ほど。木内はその三倍ほどの時間をかけて考え、ようやく自分たちが狗豚呼ばわりされたことに気づいた。
「こ、この無礼な青二才の小娘が! 口の利きかたに気をつけろっ!」
気づくと同時に激高し、早乙女に殴りかかった。
選良たる市議会議員のすることではない。だが暴力団出身の木内はこれまでにもなんども無礼な¢且閧殴りつけて屈服させ、あとになって「あれはむこうが勝手にころんだだけ」と主張してしらを切るのがいつものやりくちだった。
だが振るわれた拳が早乙女の身に触れることはなかった。木内はまるでだれかに正確無比な足払いを決められたかのごとく盛大に転倒し、自分が蹴倒したテーブルの足に身体をぶつけ、その痛みに悶絶した。
「あらやだ、勝手にころんじゃったわ」
もし木内や植田に見鬼の才があったなら軍服を着た妖艶な美女の姿と、その蠱惑的な脚がひるがえるさまが見えたことだろう。
「き、木内市議!? だいじょうぶですかっ?」
「ぐぬぬ、呪術講師とか言ったな。なにかあやしい術でも使いやがっただろう。あ痛たたたっ」
「くそっ、おまえらおぼえてろよ。社会的に抹殺してやるからなっ!」
二匹の小悪党はお決まりの捨て科白とともに退散していったあと、春虎たちは吉良からひと
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