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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
刀会 3
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げに鼻を鳴らすと、見えない相手に向けて片手をふるった。
 空中で爪を引き裂くように横薙ぎに、次いで人差し指から小指の四本を縦に。呪力を帯びた指先が描くのは早九字の格子紋。ドーマンだ。

 「KISYAAAAァァァッッッ!?」

 虚空にラグが浮かび、一匹の獣が姿を現した。前足のかわりにコウモリのような翼をはやした犬のような狐狸のような野獣、野衾。
 男の放ったドーマンに捕われ、急速に霊力と体力を奪われている。

 キーンッ!

「うるせぇぞ、シェイバ。おまえの出番はない、もうおわった」
 事実、その言葉を言い終える前に野衾はいっそう激しくラグを走らせ、消滅した。
 男の早九字は呪文の詠唱もなければまともに手印の一つも結ばない。おそろしく略式ながら、その威力は絶大だった。動的霊災は個体差が激しいので一概には言えないが、フェーズ3の霊災といえば祓魔官が部隊レベルで対応にあたるのが普通だ。それをこの男は一人で、それも簡単に修祓してみせた。
 これが男の、独立祓魔官である鏡伶路の実力だった。





 昼下がりの秋葉原。
 予定外の仕事で不機嫌になった鏡がいら立ちもあらわに歩いている。けっして空いているとはいえない街中だが、その危険な気配を察してそばを通る通行人たちは可能な限り彼から距離を開けていた。
 古代イスラエルの民を導いた男は神の威光で海を割って歩を進めたが、この男は恐怖で人の海を割って進んでいる。
 そんな鏡の後ろに数歩ほど遅れて一人の青年が続いていた。長身の鏡よりさらに背が高いが、細身でなで肩。さらに猫背のように縮こまっているので前を行く鏡よりも存在感が薄い。先ほど鏡が座席に立てかけていた刀袋を大事そうに両手で抱きかかえていた。

「……ねぇ、伶路。なんか話がちがうんじゃないの? せっかく外出が続いてるのに、せっかく斬っても
いいのがいたのに。こんなんだったら、僕いらなくない? ねぇ?」

 十月末日。東京を中心に関東全域で発生した百鬼夜行。万魔の大祓えが終わってからというもの、鏡ら独立祓魔官は都内の巡回を命じられていた。
 安全レベルまで落ち着いたとはいえ、霊脈はいまだ安定せず、動的霊災が多発していた。それもハロウィンの夜と同様、前例のない姿形となって発生する率が高く、予断をゆるさない状況だったからだ。
 だがそんな特別業務も本日をもって終了。霊脈が安定し、霊災の発生も平時レベルに落ち着いたからと上層部が判断したからだ。
 報告書の作成および提出。そして普段は使用禁止されている特殊な式神の返却のために鏡は陰陽庁にむかっていた。

(さっきの件どうすっかな……、バカ正直に報告して『まだ危険だ』なんてダリィ勤務が伸びたりしたらマジうぜぇ。けどパンピーどもにばっちし目撃されちまってるしなぁ。あ
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