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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
刀会 1
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ーだった場所。秋芳がもぐりの陰陽師として仕事をしていた頃、店内で起きた霊災を修祓した縁でオーナーから格安でゆずってもらった物件だ。
 横浜港の倉庫小屋と同様、全国にいくつかある秋芳の『かくれ家』の一つだ。
 木製のカウンターにテーブル席、古びた柱時計やギリシャ風の彫刻などが置かれ、壁に作られた大きな水槽の中では魚が泳いでいる。青い光にライトアップされた中、ゆうゆうと泳ぐネオンテトラ、プラティ、ブルーベタ――。もっともこれら熱帯魚は幻術で作られたまやかしだったが、なかなか趣のある店だった。

「……はい、そういうことになります」
「冗談だよ、おまえは人に暴力をふるってもなんとも思わないような人間じゃないし、そういう類の輩には絶対にならない」

 しばらくして鍋の中の水分が上がってきたら強火にし、沸騰してきたら中火にして焦げつかないようにかき混ぜ、アクを取りながら煮ていく。やがて果肉は綺麗なルビー色に煮とろける。自家製のジャムを作っているのだ。

「普通に生活している一般人にとって身につけた武術ってのは鞘に納まった刀みたいなもんだ。本来ならば抜くべきではない、抜くにしても一生に一度あるかどうかってくらいのしろものだ。だが俺たちのような呪術者にとってそいつを抜く必要はひんぱんにある、霊災や呪術を悪用する者たちを相手にだ。そして抜いたからには確実に相手を斬らなければならない、絶対に斬られてはいけない」

 できあがったジャムをタッパーに敷いて、その上に一口サイズに切った食パンを詰め込み、牛乳で煮溶かした市販のプリンの素を流し込み、冷蔵庫に入れた。冷えて固まればパンプティングの完成だ。
 秋芳は今だに京子との料理勝負を続けており、これはそのための一品だった。

「変わりたいと思った時点で人はすでに変わっている。人がなにかを成すには意思が必要だ。どんな能力や才覚のある者でも現状に甘んじているままならなにも変わりはしないし、能力の低い者でも努力すれば努力した分だけ変われる。桃矢、おまえの望みはもう九割がたかなっているよ。すでに技は身につけたんだ、そして戦おうと決心した。戦うための心はすでにそなわっている。自分じゃ気がつかないだけさ」
「でもいざとなると身体が動かないんです、どうしても攻撃するのが怖くて……」
「まぁ、それが普通だよ。平気で人に暴力をふるえるとしたら、そのほうが異常だわ。よし、型稽古のほかに散打。組み手もくわえて殴り殴られることへの耐性でもつけるか」

 ふと春虎のことが秋芳の脳裏をよぎった。春虎は実戦に即したかたちで経験をつみ、呪力の使い方や呪術戦そのものに慣れようとして、いつも放課後に呪練場でだれかしらつかまえて対人呪術戦の訓練をしている。
 術者同士が向かい合ってよ〜いドンで戦闘開始。などという状況はまれなので、そ
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