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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
刀会 1
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良と私闘をする現場に居合わせたことがある。その不良は不意打ちで竹刀を投げつけ、スライディングで足を蹴るという方法で剣道家を倒した。
『せめて防具をつけているところを攻撃しろ。でないと試合にならない』
『そんなことしてたら負ける。おれは勝つために戦ったんだ』
『今のはおまえの負けだ。突っ込んできた時に先に面を入れた、剣道なら一本だ』
『相手が倒れてもいないのに一本もへったくれもあるか』
『今のが侍の決闘で持っていたのが真剣だったら、おまえ死んでたんだぞ』
『そんなの、もし、の話だ。おれは生きてるぜ』
 そんなやり取りがあったのだが、はたから見ていた秋芳は不良の言葉に妙に納得してしまったものだ。いわゆるドキュンと呼ばれ忌み嫌われるチンピラの中にも、たまにこのような手合いもいるのであなどれない。
 さて、春虎のような高い霊力を前面に押し出してくるパワーファイターは巫女クラスにはほとんどおらず、良い経験になる。
 二勝二敗二引き分け。実力的にも伯仲しており、春虎と桃矢は良い勝負を繰り広げていた。

「二人とも白兵戦から呪術戦に移るさいどうしても切り替えの間ができるから、それをなくさないとな。その呪術も、いまいちぎこちない。息をするように霊力を呪力に変換し、それを練り続けてつねに術式を展開できるようなるのが今後の目標だな。術を選んでから呪力を練るのではなく、術を使う間に次の術を用意するんだ」
「おまえサラっと言うけど、それってプロに求められるレベルのスキルだぞ」
「このくらい京子はできるぞ。あとたぶん夏目も」
「あの二人とくらべるなよ……」
「春虎はプロの陰陽師になるんだろ? プロを目指す人間がプロの技術を身につけないでどうする」
「おれはまだ一年生だぜ、そんな高等技術まだ無理だって。早すぎ」
「……毛利元就は言いました」
「は?」
「毛利元就がまだ元服前、松寿丸の名で呼ばれていた頃、家臣たちと厳島神社に参拝に行ったことがある。そのおり元就が家臣たちに祈願の内容を訊くと、家臣らは『松寿丸様が安芸の主になられるよう願いました』と答えた。それに対して元就は『なぜ天下の主になれるように願わなかったのだ」と言った。家臣は『実現不可能なことを祈願しても意味がないでしょう。今はせいぜい中国地方ですよ』と笑ったが、元就は『天下の主になると祈願して、やっと中国地方が取れようというもの。まして、最初から安芸一国を目標にしていたのでは安芸一国すら取れずに終わってしまう』と、おのれの理想の高さを示して家臣一同を感心させたという」
「ふ〜ん、目標の高い人だったんだな。毛利元就ってオクラみたいな兜で部下たちを捨て駒にする冷酷な武将ってイメージだけど」
「それはゲームの話だろ。苦労人だったからか、身分の低い者にも気をくばれる君主だったそうだ」

 
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