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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
刀会 1
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言霊をもって厭魅の呪をもちいればより少ない呪力で同様のことができる。晴明ほどの術巧者だ。このときにこの厭魅の呪を使ったのでは、と俺は思う。――そうだ、桃矢。おまえの同調性共鳴症(シンクロニシティ)のことなんだがな、密教系の呪術に似たようなのがあった」
「ええっ、それはどんな術です?」
「歓喜天の呪法でな、陰陽和合。男の陽の気と女の陰の気。このふたつを合わせることによって生じる相互作用によって高い霊力を発揮するという術だ」
「歓喜天、ですか……。なんだかエッチそうですね」

 象頭の男女が抱き合っている姿をした双身の神仏で、夫婦円満・子宝を授けてくれる利益のほかにも、七代の富を一気にもたらしたり、どんな悪人の願いもかなえるという。その反面、誤った祀りかたをすれば容赦のない罰を降すという変わり種の神仏だ。

「実際エロい。性的な力をエネルギーとするシャクティ崇拝やタントラ密教とも関連のある仏様だからな。だいたい仏教系はエロいんだよ、龍樹菩薩なんて陰形を駆使して後宮に侵入してやりたいほうだいしてたし、帝釈天は阿修羅の娘や人妻に手を出したりしてるしな。……と、今はそんな話はどうでもいい」

 秋芳はロンググラスのモヒートを一気に飲み終えると、また別のカクテルを作り出した。

「おまえの同調の効果は歓喜天の和合術に似ているが、より深い場所でつながるというか、対象の深層心理にまで影響をおよぼしていると見た」

 以前のこと、ためしに笑狸に同調をこころみたさい、桃矢はあまたの化け狸たちの霊を感じ、笑狸は妖怪の本性があらわになり理性を失ってしまったことがあった。
 またそれ以外の例を聞くと、たとえば紅葉と同調したさいは鳥の翼が顕現したというではないか。

「さらには対象のルーツ、祖霊の力を引き出しているのかもしれない」
琥珀色の液体に満たされたグラスにカットしたライムをひとつまみ、フルーティーな香りがただよう。ジャック・ターのできあがりだ。
「桃矢、俺に同調をためしてみろ」
「いいんですか?」
「ああ、術の系統はわかった。だいたいの術理も想像がつく。だからのまれたりはしないさ、この前の笑狸みたく暴走したりはしないから安心してやれ」
「わかりました、それじゃあ――」

 桃矢は秋芳に近づくと遠慮がちに顔をよせ、キスをした。硬質の唇は冷たいカクテルのせいで冷やされていて、秋芳には桃矢のベリーニ、桃矢には秋芳のモヒート。それぞれが口にした酒精の味をたがいに感じる。
 ――なにも、おこらなかった――。
 霊力の波動も呪力の脈動もない。魂がゆさぶられるような同調能力発動の気配すらなかった。

「あれ? なんでだろう……」
「あー! ずるいっ、なに勝手に秋芳とキスしてるのさ。返してよ」

 なにをどう返してもらうつもりか、
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