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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
ある夜のふたり〜月語り〜
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じない働きを生業としている。
「愉快、愉快。今夜の仕事は楽しかったなぁ」
先頭を行く長身の青年が機嫌良く笑うと、両隣を歩く青年らが追従する。
「ええ、まったく。お座敷でかんたんな呪術を披露するだけでがっぽりもらえる。これだから陰陽師はやめられない」
「しかも舞妓さんと芸妓さんの接待つきときたもんだ。いやぁ役得、役得」
上機嫌に談笑する三人とは対象的に、少し距離をおいて歩く後ろの二人はどこか不機嫌そうだった。
「……必要のない無意味な卜占やこけおどしめいた呪術を見せつける。こんな芸人のまねごとみたいなことなんかやらされて、よく喜べるものです。呪術師としての矜持はないのでしょうか」
中学に上がる前くらいの齢をした、少女と見間違えそうな白皙の貌に艶のある黒髪をした美少年が柳眉を逆立て不満を口にする。
「貴人に請われて術を見せる。べつにおかしいことでも卑しいことでもないだろ。賀茂忠行は醍醐天皇に
射覆
(
せきふ
)
の業を披露し、安倍晴明は蘆屋道満と射覆の腕くらべをさせられた。平安の昔からある習いさ」
となりを歩く秋芳はそう答える。
だが口ではそう言う秋芳だったが、内心ではこの美少年と同じ意見だった。
特に『芸人のまねごと』という部分に大いに同意した。
(この気分はなんというか、あれだ。テレビのバラエティ番組で大御所と呼ばれるような声優が、あの声やってキャラやってと、若い芸人どもにオモチャや珍獣あつかいされているのを見る感覚だ。……しかしあれって見ているこっちが気恥ずかしくなるよな。自分がいじられているわけでもないのに、なんでだろう?)
「――東京の陰陽師……、祓魔官達は霊災相手に華々しい活躍をしているというのに私達は有閑者相手に占いや手品じみた呪術を見せて小遣い稼ぎ。おもしろくありませんっ」
秋芳が散文的なことを考えているあいだにも美少年の愚痴は続く。興奮のあまり変声期前のボーイソプラノがさらに高くなる。こうなるとほとんど女子だった。
この美少年の名は咲耶という。賀茂家の分家である
勘解由小路
(
かでのこうじ
)
家の者で、それだけに呪術師としての誇りが高いのであろう。
「……名門名家のお二人には今回の仕事はくだらなく感じたようですね」
咲耶の声が耳に入り、長身の青年が歩みを止めふり返る。
「けれどおれたちのような家格も血筋も平凡な凡人は名門様とちがって仕事の選り好みなんかしている余裕はないのでね、悪しからず」
「ご不満なら次からは無理につき合わなくてもいいんですよ、名門陰陽師様には東京あたりでそれにふさわしい仕事をしてもらってけっこうです」
「そうそう、東京でおれたち庶民には荷の重いお役目をこなしてください。名実ともに優秀な名門出の陰陽師なら簡単なことでしょう?」
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