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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
ある夜のふたり〜月語り〜
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。あたりをうかがい、危険はないと判断した秋芳は解呪にとりかかった。
「朝日さし、小曽ヶ森のカギワラビ、ホダ になるまで恩を忘るな」
蛇避けの呪を唱えると全身に喰らいついていた蛇は一匹残らず地に落ち、煙とともに掻き消える。
「オン・マユラ・キランデイ・ソワカ」
続いて解毒の呪を、孔雀明王の真言を唱える。
「オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ」
これも解毒の効果のある呪、薬師如来の小咒だ。
「祈願辟邪天刑星、癘鬼縛撃、疫難禳除」
これもまた解毒の呪だ。
やっかいなことに毒の種類だけでなく込められた術式も一匹一匹が異なるものだったので、それぞれ にもっとも効果のある解毒術を使っているのだ。
「禁毒則不能害、疾く!」
最後に残った毒を消去したが、かすかな違和感がある。血がよどんでいるような、にごっているような、汚れているような、いやな感じ。
体内に毒の残滓がいまだに残っているようだ。
「さすが本邦一の疫神の呪詛、一筋縄にはいかないな……」
何本かの針を取り出すと、それらを治癒符とともに器用な手つきで腕や背中の経穴に刺していく。
やがて針の針の先から黒くよどんだ靄のようなものが吹き出る。体内に残った毒気を外に出しているのだ。
ようやく、すべての呪詛毒を祓い終えた。
「オン・アボキャ・ベイロシャノウ・マカボダラ・マニ・ハンドマ・ジンバラ・ハラバリタヤ・ウン」
さらにダメ押しとばかりに光明真言を唱え土砂加持をおこない、浄めた砂を全身にふりかけて、やっと人心地ついた。木の幹にもたれかかり、目を閉じて呼吸をととのえる。
並の陰陽医がたばになって施術しても解呪に数か月はかかる呪詛を小一時間。つまり約三十分ほどでやってのけた。これが秋芳の納めた呪禁の業だ。呪禁師とはほんらい典薬寮という薬を司る部署に所属する医療官。毒や病、ケガの対処には長けている。
(さすがに、やばかったな。……あいつらは無事に帰れただろうか?)
――少し前。
満月に照らされる洛外の通りを五人の若者達が歩いていた。
いずれもそろいの装束、陰陽塾の塾生や祓魔官が着ているようなデザインの服を着ている。
彼らはみな陰陽寮に身を置く者たちだ。
陰陽寮。
戦時中に軍部によって復活させられ、現在の陰陽庁の前身となった組織。あるいは律令制時代に存在した天文、暦道、卜占をつかさどる部署と同名のこの組織は関西の呪術師たちによる陰陽庁非公認のギルド。いわゆる闇寺のようなところであった。
土御門や倉橋に呪術界筆頭の座を奪われた賀茂氏が中心となり、西国の呪術師たちをたばねていた。
「東に陰陽庁あれば西に陰陽寮あり」
陰陽寮に属する者の多くはそう自負しており、ま
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