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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
ある夜のふたり〜月語り〜
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 マシュマロのように柔らかく、日だまりのように温かい京子の身体を緑の褥に組み伏せ、耳元でささやく。

「雅やかな美辞麗句をこしらえるのは、どうにもガラじゃあないな。言葉よりも行動で、百の無駄言よりも一つの至言でしめしたい。『永遠に君を愛する』と……」
「永遠に生きるつもりなの?」
「そうだ。いっしょに仙人になってずっとそばにいて欲しい」
「いいわよ、いっしょに仙人になってそばにいてあげる。でも、そのかわりあたしだけを見てちょうだい。浮気は絶対にゆるさないわ」
「もちろん、ずっと君だけを見続ける。ずっと愛し続ける」
「月がなくなっても?」
「月がなくなっても」
「太陽が消えても?」
「太陽が消えても」
「太陽の寿命はあと五十億年はあるわ。永遠には程遠いわよ」
「なら永遠を作るため力を貸してくれ」
「どういうこと?」
「太陽はその寿命が尽きる前に膨張し、地球を焼き尽くすだろう。それを阻止するために力を貸してくれ」

 太陽は水素を核融合させてそのエネルギーで輝いている。それにより水素はヘリウムになる。
そしておよそ五十億年後に中心核にため込んだヘリウム自体が核融合を始め、それによって膨張し、太陽は赤色巨星に変化する。
 赤色巨星の放射する強大無比なエネルギーの波にさらされた地球の大気は飛ばされ、海は蒸発し、すべてが干からびた不毛の惑星になると予測される。いや、それどころか飲み込まれて地球そのものが消滅するかもしれない。
 地球に存在するあらゆる生命体がなくなる。

「さて、呪術の力でなにができるか……。太陽を鎮める? 壊す? 移す?」
「地球のほうを移動させるって方法もあるわ。それともいっそ他の星に移っちゃうとか」
「それなら人類好みの自然のある星が良いなぁ。峨眉山の霧、廬山の朝日、洞庭湖の夕日、銭塘江の海嘯……。地球にはいたるところに美しい風景がある」
「春は京都御所や乙訓寺で桃や牡丹の花を見て、夏は金引きの滝のそばで涼しくすごし、秋は東福寺で紅葉を見物し、冬は三千院の雪景色を愛でるなんて最高よね」
「初夏のイングランドの湖水地方でゆったり釣りに興じたり――」
「――秋のプリンスエドワード島をゆっくり散歩したいわ」

 何百年もたてば歴史はうつりかわり王朝や国家は興亡をくり返す。それにかかわる人々の運命は大きく変転し、歴史をつむぐ。どの時代にもすぐれた芸術家や作家があらわれて書物を書き、詩を作り、絵を描き、彫刻や楼閣を造り、音楽を奏でる。それらを鑑賞するだけでも飽きないだろう。
 中国の仙人は皇帝を始めとする時の権力者をからかったり、妖怪をやっつけたり、美味い酒を飲んだりして退屈などとは無縁に永遠の生を楽しんだ。
 于吉や左慈は小覇王や乱世の奸雄を翻弄し、羅公遠は唐の玄宗皇帝を月へつれて行っ
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