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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
ある夜のふたり〜月語り〜
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初、近場の月見スポットで月見をする予定だったのだが、やはり二人きりで観月を楽しみたいとあって、この庭園にある大池を拝借することにした。とはいっても家主の許可は得ていない。
ここの住人が今宵今晩この時間に庭を使うかを確認し、使わないという答えを聞いたうえで、月見に利用するから貸して欲しいと頼んだのだが、ことわられた。
とうぜんだ。知り合いでもないのに庭先を貸してくれなどと言われ、軽々しく貸すような者はまれだろう。まして相手は家格も財産もある政治家である。どこの馬の骨とも知れぬ若者を敷地内に入れるなどありえない。
「清風朗月不用一銭買。江山風月、本無常主。それなのに今の世は美しい自然はほとんど金持ちや大企業によって買い占められ、小は高い塀に囲まれた私有地に、大は人工的に開発されたリゾート地になり、自由に立ち入ることができないばかりか観賞すらままならないようになっている。まったくなげかわしいことだ。それに自分たちが利用するというのならともかく、使いもしないのに絶好の月見場所を捨て置くのはおかしい、もったいない。――だいたいこの国の政治家や資産家と呼ばれる連中は土地や物を買いあさるばかりで社会に貢献しようとする者が実に少ない。自分で愛でるならともかく、転売や示威目的で作者の名前も価値もわからない美術品を購入し、倉庫で埃まみれにするなどもってのほかだ。博物館で国民みんなに公開すべきだろうに。ここの庭の持ち主なんかもバブルの時に青花釉裏紅大壺を手に入れたようだが、なんでも『明日には値の上がっている物を』などと言って買い求めたそうだ、まったく下品極まりないな。価値のわからないやつに価値のある物をあてがうなどもったいない。俺ならひとしきり愛でた後で博物館や美術館に寄贈するのに」
「わかったから、盗んだりしちゃダメよ」
そんなやり取りの後、人払いの結界を張って二人きりの月見を堪能しているのだ。
「少し趣を変えるか」
秋芳はそう言うと左手を池に入れ、右手を口もとに寄せて剣指を作り、なにか呪を唱えた。
ぽつり、ぽつり、ぽつり――。
しとしとと小雨が降り始めた。不思議なことに雨粒は二人の乗る蓮は避けて落ちている。
これもまた呪術のなせる業だ。
水面に映った月の形をくずさない程度の細雨が奏でる心地の良い水音があたりをつつむ。
青い光に照らされ、小雨のヴェールにつつまれた湖面に浮かんでいると、まるで水の底にでもいるかのような気持ちになる。
「俺は秋に降る雨が好きだ。夏場のそうぞうしいゲリラよりも情緒があり、春のじめっとした小ぬか雨よりもさわやかで、冬のかじかむような寒の雨より温かい。そんな秋の雨が大好きだ」
「あたしも好きよ。雨っていうか、雨の降る情景が好き。音のある静けさとでも言うのかしら、雨音ってまわりの雑音をさえぎって
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