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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
万聖節前夜祭 5
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「まったく、いらん時を使わせやがって……」

 エレベーターに乗り込み、三十三階を目指す。

『ダイヤモンドは結婚指輪にとっておくとして、なにがいいかしら……』
「宝石をおねだりするつもりか? ……まぁ、いいか。お守りがわりに一つプレゼントしよう」
『やったぁ☆』
「縁起をかついで誕生石がいいかな」
『あたしの誕生日は八月一六日よ』
「ならペリドットだな」

 ペリドット。オリーブのような明るい緑色をした宝石で、生命力や希望、発展などを象徴する。パワーストーンとしては闇を消し去り、邪悪なものを追い払う退魔の力と精神を安定させる効能があるとされる。
 古代ローマ人はその石が夜になっても輝きが遜色しないことからイブニングエメラルドと呼んでいた。また中世のヨーロッパでは教会の装飾などによくもちいられた。

「カットされた宝石というのは神秘形である三角形のあつまりだ、だからそれだけで魔力があると西洋では考えられている」

 三角というのは創造の基本、出発点とされ、あらゆる物事の誕生という意味合いから新しい展開や開運、発展などのパワーを持つといわれる。
 いくつもの小さな面が幾何学的に組み合わされるようカッティングされた宝石は護符そのものだ。

『そう言われると、宝石って五芒星や六芒星がぎっしりつまってるように見えるわね』

 そんなやりとりをしているうちに三十三階に到達した。表へ出たとたん、熱と光と火焔が豪雨のようにふりそそぎ、着ている服から焦げるような臭いが立ち込める。
 身体が焼ける。秋芳は即座に火伏札の力を開放し、炎熱を防いだ。
 劫火が吹き荒れ、爆風が渦巻く中、不動明王の姿がそこにあった。
 不動明王。あるいは不動威怒明王、不動使者や無動尊とも。
 降三世明王、軍荼利明王、大威徳明王、金剛夜叉明王ら五大明王の筆頭であり、大日如来が人々の悪心を調伏するため憤怒の姿で顕現したと姿だという。迦樓羅炎(かるらえん)と呼ばれる火焔の光背を背負っているが、これは不動明王が火焔の中に身を置いて自らを火焔そのものにすることにより、あらゆる煩悩を焼き尽くすということをしめしている。
 右手に智剣、左手に羂索(けんさく)を持っており、右手の剣で貪・瞋・癡ら三毒の悪障を断ち、左手の索であらゆる衆生を引きよせて正道に導くという。
 そのような凄まじきものがいた――。ように見えた。
 そこにいたのは尊格ではなく一人の人間。袈裟を着た法衣姿の中年男が一心不乱に火界咒を唱えている。宮地磐夫だ。
 宮地の身体から立ち昇る怒涛のごとき霊気が、不動明王の姿を観せたのだ。
 秋芳は声をかけることも忘れ、思わずその姿に見入ってしまった。
 その時、頭上に空いた霊脈に通じる穴から一体の動的霊災がこぼれ落ちる。白い剛毛におおわれた双
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