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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
万聖節前夜祭 5
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姿は見えない。いつぞやの姿なき者とは別の声。陰陽庁の長官室というのは透明人間の憩いの場ではないのだが。

「ま、実際うれしいよね。けがの功名、瓢箪から駒ってとこかな」
「……ずいぶん若々しい声をしているな」
「声だけじゃなく身体も若くなる予定だよ、姫君に合わせてね。今すぐお見せしたいところだけど、あいにくとまだ『成って』いないんだ」
「ならおとなしくしていたほうが良いんじゃないか」
「そうなんだけど私もうれしくてね、ついつい顔を見せに来ちゃったわけ」

 姿なき者の科白ではない。

「見えない顔を見せに、わざわざ長官室の結界を突破して来たのか」
「あはは、言わない言わない。それよりもさ、今回みたいな霊災なら大歓迎だよね。来年あたりもう一回こないかな」

 都内どころかその近郊にまで被害のおよんだ大規模な霊災。だが人的被害はほとんどなかった。大騒ぎする動的霊災から逃れるさいに転倒等で負傷した者や、たちの悪いいたずらの被害に遭った者は多数存在したが、死亡者数はゼロ。新宿など都庁を中心に多くのビルが倒壊したにも関わらず、避難が済んでいたおかげで人命が失われるようなことはなかった。
 壊れた建物の再建により富を得る者も多数いよう。小規模の破壊を治す再生活動により経済が潤う例は多々ある。
 なによりよろこばしいことは世間の陰陽師に対するイメージアップだった。
 霊災による社会的混乱。それを一人の死者も出さずに鎮静化させたことにより(実際はほうっておいても夜明けとともに消滅したのだが)陰陽師の重要性・重大性を広く世間に認知させ、世論を陰陽法の改正に賛成するように誘導できる。
 メディアでは都庁でおこなわれた可動護摩壇による修祓活動が繰り返し流され、陰陽師の雄姿が喧伝されていた。
 彼らを肯定する声は若者を中心に大きく広がっていた。
「呪術ってかっこいい!」「やっぱり陰陽術って必要だよな」「呪術はもっと幅広い分野でも利用するべきだと思います」「悪い人たちに怖いことされたけど、魔女みたいな格好をした陰陽師の人に助けてもらいました」「陰陽予算削減? じょうだんじゃない、もっと増やすべきだ。可動護摩壇の数も増やすべき。あと彼ら陰陽師の給料もね」「陰陽法改正賛成! 反対するやつは●●人か非国民」などなど……。
 もともと都内を中心に霊災が多発するようになったのは陰陽師である土御門夜光のおこないが原因で、それを処理するのは陰陽師に課せられた当然の責務であり、ことさら持ち上げるのはいかがなものか。というような意見に対しては「ならおまえが霊災に巻き込まれても陰陽師に助けを求めるなよな」
「いつまで過去のこと引きずってんだよ」などという言葉があびせられた。
 陰陽庁が陰陽法を定めたのは今から半世紀以上も前になる。霊災の対応に追われていた当時の陰
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