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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
万聖節前夜祭 5
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このビジョンは架空のものなんかじゃない、おそらく過去のできごとを映している。なんの悪だくみ
をしているのやら……)

「異授卵丹の術を工夫してできた子宮を使い、このような母体を苗床にすれば最高の逸品が創れます」

 異授卵丹。その名には聞き覚えがあった。巫蠱の術の一種で、ある生き物を殺したあと、その死骸を特別な方法で精製して煮込み、丹薬を作る。これが異授卵丹だ。
 この丹薬を飲まされた者は性別を問わず即座に卵を孕むこととなる。早ければ九日、遅くて九年にかけて母体内で成長して産まれ出る。メスならば通常の産道からだが、オスの場合は腹が裂かれることになる。
 この卵からは丹の原料になった生き物と卵を孕んだ生き物、双方の特徴を持った生物が生まれるという。本来は卵生ではない生物も孕ませることが可能だ。たとえば人間でもかまわない。
 外道外法の業である。
 そのような邪な術をもちいて作られた子宮とはいかなるものか。

「当代最高の陰陽師の子種を神童の中で精製するのです。さぞかし優れたモノが創れましょう」

 この二人がどのような算段をしているのか、なんとなくわかった。
 人と人とを不自然に混ぜ合わせ、化外の存在を生ませようとしているのだ。
忌々しい、吐き気がする。
 胸の奥から激しい怒りと憎しみが湧き起こった。いや、それだけではない。
 恐怖だ。
 秋芳はこの光景に恐怖を感じた。
 なぜ自分はこのようなものを見るのか? このやりとりは自分に深く関係することなのか? だとしたらどのように関わるのか、もしや――。
 鼓動が高まり、息も荒くなる。百鬼の群れにかこまれ、呪詛の刃にさらされようと呼吸一つ乱さない賀茂秋芳が、恐れ、慄いている。
 するとつないだ手から暖かい気が流れ込んできた。
 京子の気だ。
 京子から清浄な気が流れ込んで来る。秋芳の心中を荒らしていたどす黒い感情はそれに洗い流され、消え去った。

「ねぇ、秋芳君。さっきのお願いの話なんだけど、あたしリボンが欲しい」
「……うん? あ、ああ。いいぞ。なんでも買ってやる、どんなのが、何色がいい?」
「秋芳君が決めて。秋芳君の選んだリボンが欲しいの」
「そうか、どんなのがいいかな……」

 霊層が薄くなる。もう少しで地上へ出られるだろう――。





 陰陽庁。
 深夜。丸一日机にむかって事後処理業務をこなしていた倉橋源司が軽くシャワーを浴びて(これには斎戒沐浴という呪術的な意味があった)長官室に戻り、ふたたび仕事を再開する。
 書類にペンを走らせる微弱な音がしばらく響く。巌のような源司の表情がかすかにゆるんだ瞬間、室内の空気にわずかな動きがあった。

「うれしそうだねぇ、倉橋」

 応接用のソファのあるあたりから若い男の声がした。だが
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