暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第一部
序章 〜桃園の誓い〜
序 〜死、そして新たなる生〜
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「まず、ここは何処なのだ?」
「……幽州の琢郡だ」

 幽州?
 琢郡?
 うむ、聞かぬ地名だ。

「では、ここは大陸か。何という国だ?」
「国、か。……漢王朝だ、衰退しているがな」

 漢王朝。
 そして、関羽。
 ……まさか、な。

「それから、関羽。貴殿は誰に仕えている?」
「主は未だにおらぬ。今は、我が武を鍛えながら、民を苦しめる賊どもを、討っているところだ」

 ふむ。
 関羽と言えば、劉備、張飛という義兄弟がいる筈。
 すると、まだ二人には出会う前……という事になるな。
 ……どうやら、事態が飲み込めてきた。
 何故、死んだはずの私がここにいるのかは、定かではない。
 ただ、一つ言える事。
 私は、書物で読んだ、三国志の世界にいる……その事実だ。
 と、その時。
 向こうから、砂煙が上がっている事に気づいた。
 そして、響き渡る馬蹄の音。
 ……皆、頭に黄色い布を巻いた集団が、こちらに向かってきた。

「関羽」
「何だ?」
「刀は持てそうか?」

 私は、兼定を引きながら尋ねる。

「どういう意味だ?」
「まずは、あれを何とかしなければならない。違うか?」
「……そのようだが。しかし、狙っているのは貴様だけであろう?」
「そうかな。さっき、賊相手に戦ってきたと言ったではないか。それに、貴殿程の器量良しが無抵抗、とあらば……。さて、賊はどうするかな?」

 私の言葉に、関羽はサッと頬を赤らめる。

「な、何だと!」
「それでも構わないというのなら、そこで大人しくしているがいい。私は、ここで野垂れ死にするつもりはないのでな」
「…………」

 関羽は立ち上がり、青龍偃月刀を拾い上げる。

「言っておくが、まだ貴様を許した訳ではないからな」
「やれやれ、強情だな。だが、まずは奴らを何とかしてからだ」

 兼定を、今一度握り直す。
 ……さて、私はここで死ぬか、それとも……?
 いや、喧嘩に負けて死ぬのは性分に合わぬ。
 ならば、やってやるだけの事だ。
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