第一部
序章 〜桃園の誓い〜
序 〜死、そして新たなる生〜
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て止まなかった、あの関羽だというのか?
ただならぬ気迫は感じるが、それにしても違和感は払拭出来ぬ。
「貴殿、関羽と言ったな?」
「ああ。この青龍偃月刀の錆にしてくれる! だが、最後に名ぐらい、名乗らせてやるぞ」
同姓同名なのかも知れぬが、紛れもなくこの女は関羽と言うらしい。
「どうした! 名乗れ!」
「よかろう。私は内藤隼人……いや、蝦夷共和国陸軍奉行並、土方歳三」
素性の知れぬ相手に偽名と考えたが、意味があるとも思えず思い止まった。
「……何を言っているのだ、貴様は。蝦夷共和国、とは何だ?」
「知らぬ、と? では、ここは異国か」
「何をブツブツ言っているのだ! 言い残す事はそれだけか?」
「待て、まず刀を収められよ。私は礼を言われるならともかく、斬られる筋合いなどない」
「莫迦を申せ! 例え賊とは言え、それを手にかけ、あまつさえ盗みを働いたではないか!」
「人の話を聞かぬ御仁だな。もう用は済んだ、元に戻しても構わん」
「……それで逃れられる、とでも? 官吏に突き出してやる、不審な輩め!」
そう言って、青龍偃月刀を向けてくる関羽。
あれをまともに受けては、兼定といえども一溜まりもないな。
ならば、まともに受けないだけの事だ。
「でぇぇぃ!」
青龍偃月刀が、うなりを上げる。
刃風は鋭く、重そうだ。
受ける真似などせず、かわす。
「捕らえるつもりなのか、本当に?」
「何、生かしたまま捕らえる必要もないからな。手に余れば斬り捨てるだけの事!」
「やれやれ、それが天下の義士の言葉とはな」
「ぬかせ! 貴様如き卑劣な輩に、私を貶める資格などない!」
対峙する事、四半刻。
「どうした、かわしてばかりか」
「ふっ。それはどうかな?」
「何だと?」
私は躱しざま、足下の砂を掴む。
そして、関羽に向かって投げつけた。
「な、何をする!」
一瞬の隙。
兼定を抜き、小手に、峰打ちを浴びせる。
「うぐっ!」
いかに豪傑だろうが、真剣の峰打ちとあれば、痛みも相当なもの。
そして関羽は、青龍偃月刀を取り落とす。
首筋に、兼定を突き付ける。
「勝負あったな」
「おのれ! 貴様、それでも武人か!」
鋭い目で、関羽は私を睨み付けてくる。
「実戦は、勝てば良いのだ。道場稽古とは訳が違う」
「殺せ! 貴様のような卑劣漢に討たれるのは無念だがな」
「臨み通りにしてやろう……と言いたいところだが」
「何だ! この上、辱めを与えるつもりか!」
「そうして欲しいのならそうするが、生憎とそれは私の好まぬところ。それより、質問に答えて貰おうか」
「…………」
関羽は無言で、私を睨んだまま。
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