第一部
序章 〜桃園の誓い〜
序 〜死、そして新たなる生〜
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未明に始まった海戦。
亜米利加国旗を掲げた奇襲は見事に当たり、甲鉄に迫る事には成功。
だが、その後の戦況は思わしくなかった。
「ギャッ!」
「ぐわっ!」
甲鉄のガトリング砲が火を噴き、甲板上の味方が次々に倒れていく。
「うぐっ!」
傍らにいた甲賀艦長が、呻き声を上げた。
「どうした?」
「い、いえ。何でもありません」
そうは言うが、どこかを撃たれたのだろう。
苦悶の表情を浮かべつつも、舵輪からは手を放そうともしない。
……このままでは、全員やられるのも時間の問題であろう。
「私が斬り込む。後は頼んだぞ」
「なりませぬ! 局長!」
元新撰組の者が、慌てて私の袖を掴んだ。
局長か……懐かしい呼称だ。
近藤さんが降伏し、私が後を引き継ぐ形になってしまった新選組。
人数も減り、もはやかつての面影はない。
……今では総司も左之助も身罷り、斉藤君とも離ればなれになってしまった。
島田と中島だけは従ってくれているが……後は、僅かばかりの隊士が残るのみ。
斃してきた攘夷浪士どもは、あの世で我らを嗤っているやも知れぬな。
「いや、やはり参ろう。榎本総裁に、よしなに伝えてくれ」
「局長!」
「土方様!」
その時。
耳を聾するような、大音響が響き渡った。
周囲の敵艦が、漸く戦闘態勢に入ったようだ。
この回天目がけて、一斉射撃を始めた。
とは言えこちらも甲鉄に乗り上げている格好、無闇に撃てば巻き添えにしてしまう。
そうそう当たらない筈だが、このまま座していては死あるのみ。
「作戦は失敗ですな。撤退するぞ!」
司令官、荒井殿の号令がかかった。
……やはり、無謀であったか。
本来三隻で実施する筈だった作戦が嵐や僚艦の故障により、この回天単独での決行となった。
もともと、無理を承知で始めた作戦ではある。
……しかし、つくづく運がなかったとしか言えぬ。
ん?
その時、頭上から、嫌な音が聞こえた。
振り仰いだ私の眼に、一発の砲弾が見える。
「局長! 待避を!」
「い、いかん! 回避だ回避!」
周囲が騒いでいるが。
……これは、間に合わんな。
ここで終わる、それも定めであろう。
数秒後、炸裂音と共に、私の身体は宙を舞った。
「……ん……む……」
意識を取り戻した私は、身体を起こす。
……はて、面妖な。
海戦をしていた筈が、大地の上にいるとは。
しかも、見渡す限りの荒野。
懐を探る。
巾着は無事だが、ニコールから貰ったピストルは、見当たらない。
愛刀の和泉守兼定は、そばに転がっていた。
堀川国広も……無事だな。
後は
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