暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第一部
序章 〜桃園の誓い〜
序 〜死、そして新たなる生〜
[1/5]

前書き [1] 最後 [2]次話
 未明に始まった海戦。
 亜米利加(あめりか)国旗を掲げた奇襲は見事に当たり、甲鉄に迫る事には成功。
 だが、その後の戦況は思わしくなかった。

「ギャッ!」
「ぐわっ!」

 甲鉄のガトリング砲が火を噴き、甲板上の味方が次々に倒れていく。

「うぐっ!」

 傍らにいた甲賀艦長が、呻き声を上げた。

「どうした?」
「い、いえ。何でもありません」

 そうは言うが、どこかを撃たれたのだろう。
 苦悶の表情を浮かべつつも、舵輪からは手を放そうともしない。
 ……このままでは、全員やられるのも時間の問題であろう。

「私が斬り込む。後は頼んだぞ」
「なりませぬ! 局長!」

 元新撰組の者が、慌てて私の袖を掴んだ。
 局長か……懐かしい呼称だ。
 近藤さんが降伏し、私が後を引き継ぐ形になってしまった新選組。
 人数も減り、もはやかつての面影はない。
 ……今では総司も左之助も身罷り、斉藤君とも離ればなれになってしまった。
 島田と中島だけは従ってくれているが……後は、僅かばかりの隊士が残るのみ。
 斃してきた攘夷浪士どもは、あの世で我らを嗤っているやも知れぬな。

「いや、やはり参ろう。榎本総裁に、よしなに伝えてくれ」
「局長!」
「土方様!」

 その時。
 耳を聾するような、大音響が響き渡った。
 周囲の敵艦が、漸く戦闘態勢に入ったようだ。
 この回天目がけて、一斉射撃を始めた。
 とは言えこちらも甲鉄に乗り上げている格好、無闇に撃てば巻き添えにしてしまう。
 そうそう当たらない筈だが、このまま座していては死あるのみ。

「作戦は失敗ですな。撤退するぞ!」

 司令官、荒井殿の号令がかかった。
 ……やはり、無謀であったか。
 本来三隻で実施する筈だった作戦が嵐や僚艦の故障により、この回天単独での決行となった。
 もともと、無理を承知で始めた作戦ではある。
 ……しかし、つくづく運がなかったとしか言えぬ。

 ん?
 その時、頭上から、嫌な音が聞こえた。
 振り仰いだ私の眼に、一発の砲弾が見える。

「局長! 待避を!」
「い、いかん! 回避だ回避!」

 周囲が騒いでいるが。
 ……これは、間に合わんな。
 ここで終わる、それも定めであろう。
 数秒後、炸裂音と共に、私の身体は宙を舞った。



「……ん……む……」

 意識を取り戻した私は、身体を起こす。
 ……はて、面妖な。
 海戦をしていた筈が、大地の上にいるとは。
 しかも、見渡す限りの荒野。
 懐を探る。
 巾着は無事だが、ニコールから貰ったピストルは、見当たらない。
 愛刀の和泉守兼定は、そばに転がっていた。
 堀川国広も……無事だな。
 後は
前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ