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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
万聖節前夜祭 4
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なく入っていい場所ではありません。すみやかにお引き取りください」

 弓削は内心のモフりたいという欲求を顔にはあらわさず、やたらとハサミを持ち出すベストセラー作家や戦う図書館員のような凛とした声で応えた。

「では許可をいただきたい」
「私にはその権限はありません」
「権限のある方を連れて来て欲しい」
「無理です」
「……どうあっても、私たちを通したくないと?」
「お引き取りください。でなければ不退去罪で――」

 霊災相手に人界の法を説く滑稽ぶりに気づいて途中で口をつむぐ。

「――とにかく、ここからは一歩も先へ進ませません。回れ右して帰ってください」
「しかたありません、他の道を探しますか……」

 王冠青年はしぶしぶときびすを返し、多くの妖精たちがその後に続いたが、それに従わない一団もいた。
 胸と腰まわりだけをわずかな布地で隠し、黒いローブを羽織った女性が進み出る。
 白い、新雪のように真っ白な肌と、新月の晩の夜空のような漆黒の髪をした女だった。

「問答無用、推して参る。――万物の根源にして万能なるマナよ、魔力を打ち消す力となれ。ユベオー!」

 女の身体からほとばしった呪力が弓削の結界を無効化せんと侵食する。

「オン・ビシビシ・カラカラ・シバリ・ソワカ」

 弓削は動じることなく不動金縛りの術を唱えた。これは対呪術者のみならず対霊災用呪術として祓魔官、呪捜官。両者とも多く使用するスタンダードな術だ。
 弓削の放った呪は散弾のごとく飛び散り、結界を無効化しようとしたローブの女の呪力のみならず、女性自身。さらには周囲にいた妖精たちまで巻き込んで拘束した――ように思えた。

「我が身に宿るマナよ、魔力の源よ。心の力を強め、変化をさまたげよ。ユベオー!」

 そうはさせまいと抗魔の術を発動。術と術がぶつかり合い、呪力により力比べが生じた。
こと護りに関しては結界術のエキスパートである弓削に勝る呪術師はそうそういない。押しては引き、引いては押し、押すと見せかけて横にそらす――。
 弓削の巧みな術さばきにローブの女はいら立ち、次の呪文を口にする。

「万物の根源たるマナよ、光の矢となりて疾れ。サギッタ・ステッラエ。サギッタ・ステッラールム。ユベオー!」

 呪力の塊が銀色に光り輝く無数の矢となって殺到。

「なめるな!」

 霊災のくせに呪術まがいの芸当をするなんて生意気な――。
 弓削が一喝すると彼女の周囲の結界が光の矢を受け止めるような形で、折りたたむように変形した。さらにそれを囲むように複数の結界が一度に展開。
 光の矢を受けて虹のようなきらめきを放った。
 巧妙な術理で構成された複合型の結界。それは防御型の結界ではなく、獲物にむかって口を開いた獣のあぎとを連想さ
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