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艦隊これくしょん 災厄に魅入られし少女
第八話 一瞬の油断
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していく。そして調理器具を準備し終えると、凰香は包丁を片手に初霜に言った。

「本当にいいんですか?疲れてるなら戻って休んだ方がいいですよ?」
「私は大丈夫ですよ。『この程度で』疲れたりしませんし、提督達が何を食べるのかが気になるんです」

初霜が笑顔でそう言ってくる。さらっととんでもないことを言ったが、凰香は全く気にしない。
だが凰香としてはできることなら初霜には帰ってほしかった。凰香や時雨はそこまで問題ではないのだが、榛名と夕立は違う。
榛名と夕立は今は凰香の艦娘だが、もともとはここの鎮守府に所属していた。当然初霜のことを知っている。初霜は今は気づいていないようだが、いつ気づかれるかわからない。
それに『補給』しかできない初霜の前で『食事』をするのも、反感を買いかねないのでやらない方がいい。
しかし当の本人である初霜はそのことを全く気にした様子はなく、笑顔でこちらを見ている。
凰香は確認するように榛名と夕立を見た。すると二人は『大丈夫です』と言わんばかりに頷く。
それを見た凰香は初霜に言った。

「じゃあ、そこでおとなしくしていてくださいね」
「了解しました」

凰香の言葉に初霜と妖精さんが敬礼してくる。

「私は自室で適当に食べることにするわ」

凰香が調理を始めようとした時、防空棲姫がそう言ってきた。凰香は初霜に聞こえないように言った。

「じゃあ何か簡単なものも作るよ」

凰香はそう言うと時雨、榛名、夕立の三人と共に調理を始める。
その後、厨房にはまな板を鳴らす包丁の音や肉の焼ける音、グツグツと鍋から煮える音が響く。
凰香達が淡々と調理を進めていくのを、初霜は何も言わずに黙って見つめている。その眼差しは先ほどの笑顔とは打って変わって鋭い視線だった。
凰香はその眼差しを気にすることなく調理を進めていき、あとは具材を煮込む段階に入った。
凰香は時雨と榛名と夕立に言った。

「あとは煮込むだけだから、三人共できるまで休憩していていいわよ」
「じゃあお言葉に甘えて休ませてもらうよ」
「榛名も休憩させていただきます」
「夕立も同じです」

三人がそう言って厨房から出ていく。すると今まで黙っていた初霜が口を開いた。

「提督、随分と手慣れてますね。ここに来る前に何かお店のようなところにいたのですか?」
「違いますよ。一人暮らしが長かったから必然的に上手になっただけです」

凰香は鍋の火を弱火に調節しながら初霜にそう言った。実際旧泊地にいた時は時雨が建造されるまで防空棲姫から教わって実質一人で料理を作っていた。
また軍学校にいた時は『食事を作るのも士官の役目』ということで全生徒を十人一班に分け、四つの
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