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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
巫女学科
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使しないなんて。若い呪術師は一般人相手にもキレて、平気で殺傷するような術を使うのが多いからな」

 ちがう。
 自分は呪術を使わなかったのではない、使えなかったのだ。
 恐怖にかられ、身がすくんで動けなかっただけだ。

「平気で殺傷するような技を使った呪術師なら、ここに一人いるけどね〜」
「こっちは一人、むこうは五人。それも格闘技の、たぶんボクシング経験者みたいだったようだし、正当防衛以外のなんでもないさ」
「へぇ、街でボクサー五人に因縁つけられるだなんて、桃矢くんついてないね」
「……はい、彼らとはたしかに『因縁』があります……」

 かつてボクシングを習っていたこと。彼らはそこにいた素行の悪い練習生だったことを桃矢は説明した。

「身体を鍛えるためにボクシングか。悪い選択じゃないが、そういう不良連中がいるようなジムなら、やめて正解だよ。それに巫女がボクシングって、ユニークすぎるだろ」
「あはは、たしかにそうですね」

 桃矢の顔がほころぶ、可憐で清楚な花が咲いたかのようなひかえめな笑顔。そこには京子のように覇気と自信に満ちた輝かしい笑顔とはまた趣の異なる魅力があった。
 熟練の陰陽師。見鬼の使い手は肉眼で見ると同時に霊的に『視る』。陽の気をまとう桃矢を男だと認識していてなお、惹かれるものがあった。

(もっともこいつが女だとしても俺には京子がいるから妙な気は起きないがな。それにしても笑狸といい木ノ下先輩といい、この桃矢といい。最近の日本は男の娘が増えているのか?)

「あの、どうかしましたか?」
「ああ、近いうちに巫女クラスにお邪魔するからよろしくな」
「え? ……あ! あなたが賀茂先生ですか?」
「なんだ、もう話がいってるのか」
「はい、この前、大友先生から聞きました。賀茂家の優秀な生徒が臨時で講師をするって」
「なら話は早い。いかにも俺がその賀茂だが、せっかくだ。巫女クラスについて色々と聞かせてくれ」
「僕にわかることなら……」

 陰陽師とは異なるアプローチで呪術にかかわる、異端ともいえる巫女クラス。
 彼女らは緋組と白組の2クラス制。各定員三十九名の七十八人で構成。その中で三人組(スリーマンセル)の『隊』を作って行動する決まりがある。授業のみならず私生活にもおよび、一蓮托生の共同生活で協調性を養うのだ。
 授業のほかに、巫女のタマゴが請け負う様々な案件が課題としてあり、神楽を舞ったり祈祷したり、お年寄りの湯飲み話につき合ったり、社の掃除をしたり、失せ物を探したり、恋の相談をしたり、その内容は多種多様だ。
 また神敵と対峙すれば自らを刃へと変え対峙することすらある。これにはいわゆる霊災の修祓もふくまれている。
 そして梅桃桃矢。彼は異例中の異例である四人目の隊員にして緋組の四十人目。
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