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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
まぼろしの城 3
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ち、煙を上げて木片に戻った

「まだじゃまだじゃ」

 果心居士が結印し念を凝らすと、木片が一つにかたまり一匹の竜と化して牙を剥く。だが秋芳はそれには目をくれず地面に向けて刀印を切る。

「PIGYAAAッ!」

 いつの間にそこにいたのか、奇怪な声を上げて卒倒したのは双頭のねずみだった。
 竜は目くらましの幻術。地を走るねずみの姿をした呪詛式こそ本身の攻撃と察し、それを祓ったのだ。

「珍しき蛇除けの呪。そして幻術に惑わされぬその眼力。良し良し! さぁ、次はおぬしからくるがよい」
「そうさせてもらおう。京子」
「なに?」
「俺の上着に入ってる五行符。全部打ち出せ」

 もはや理由は訊かない。京子は言われた通りに自分の着ている、秋芳の上着に入っていた木火土金水の五行符をすべて打ち放った。
 桜吹雪のごとく呪符が舞い散る。

「東方太歳星君、南方?惑星君、西方太白星君、北方辰星君、中央鎮星君。陰陽五行の太極に位置する陽中の陰と陰中の陽の星々、つどいて散り、散りてつどえ。急急如律令!」

 木気は火気を生み、火気は土気を生み、金気は水気を生み、水気は木気を生む――。
 陰陽道の根柢を成す五行思想にもとづいた相生相克を利用した呪術。
 相生を重ねるごとに威力を倍加させた呪力が純然たる破壊の力を生じて荒れ狂い、御座の間を吹き飛ばす。

「やりおるわ! オン・マリシ・エイ・ソワカ」

 果心居士は摩利支天の真言を唱え、結界を展開。怒涛の勢いでせまりくる呪力の波を防ぐのではなくすり抜けた。陽炎を神格化した天尊である摩利支天は穏形を司る象徴だ。
 たわめた人差し指を親指で弾く弾指を三度おこない、さらに摩利支天の真言を唱える。

「サラティ・サラティ・ソワカ――オン・マリシ・エイ・ソワカ」

 調伏相手を打擲する摩利支天の神鞭法。呪力の鞭がうなりを上げて秋芳を打つ。

「苦哉大聖尊、入真加太速、諸天猶決定、天人追感得、痛哉天中天、入真如加滅。急急如律令」
 あらゆる厄災から身を守る道教の呪文。呪力による堅固な盾が生じ神鞭を防ぐが、その衝撃までは消せなかった。衝撃が貫通し秋芳の全身の霊気を、霊体を打ち据える。痺れをともなう痛みが身体中に走る。
 やはり、強い。
 秋芳はあらためてそう思う。先ほどの五行方陣の術式に隙がったとは思えない。それを摩利支天の隠形法をもちいたとはいえ回避するのは、この果心居士と称する怪老がそれだけの実力をそなえているからに他ならない。

(だが摩利支天の穏形術。そうそう連発できるものでも持続できる術ではないはずだ。仮にできたとしても、貫く!)
 あえて一枚ずつ残した五行符に気を凝らし、素早く結印する。

「東に少陽青龍、南に老陽朱雀、西に少陰白虎、北に老陰玄武、中央に太
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