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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
まぼろしの城 1
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た動き出した。
 今のは術式をまともに組まない雑な呪だった。しかし詠唱や集中がないぶん素早く発動できる。
 早くて雑な術と、遅くて丁寧な術とどちらが良いか――。

「……ずばり両方ね! 時と場合によって使い分けるのが正解よ」
「両方ってずるい答えだなぁ」
「あら、ちがうの?」
「いや、たしかに臨機応変に使いわけるで合ってる。だが強いてどちらか選ぶというなら遅くて丁寧な術だ」
「あら、ちょっと意外ね。あなたのことだから『いくら正確に術を発動させても相手がそれに対して万全な構えをしたら効果は薄い。それよりは反応される前に攻めて攻めて攻めまくればいい。相手が対処できないなら拙速でもじゅうぶん効果を得られる』とか言いそうなのに」
「あー、たしかにそんなこと言いそうだわ、俺……」
「でしょ? ちがうの?」

 甲種呪術は制御を誤れば暴走し、術者どころか周囲にまで被害をもたらす可能性がある。そのため一つの呪術を習得するさいは完全に制御できるようになるまで習うし、実際に使用するさいも丁寧に細心の注意をはらって行使するのが常だ。
 だが時には危険を承知で雑だが早い方法で攻撃してくる者もいる。先ほど秋芳が使ったような不完全だが高速で発動できる金縛りなども、牽制。本命の攻撃につなげるジャブのような使い方をすればバカにはできない。
 手数の多さと速さに対して、安全かつ丁寧で正確な術を用意していては間に合わない。

「それでも術が暴走した時の反動や、相手に返された時の危険性を考えれば『きちんと呪文を選んでから呪力を練り、正確に発動させる』べきだ。白兵戦じゃあるまい、呪術戦で考えるより前に体を動かせ。なんてのはまちがってる。考えることを放棄してはいけない」
「でも実際にそういう雑で危険なやり方で呪術を使ってくるのが相手だと、押し負けちゃったりはしないの?」
「そのための訓練だよ。思考する時間を限りなくゼロに近づけ、安全で素早く、かつ正確で丁寧な呪術を行使する。日頃から呼吸するように無意識に呪力を練ることを心がける。そのためには鍛錬あるのみ」
「つまりあたしの日頃のおこないはまちがってないってわけね」
「そう。奇策はしょせん奇策。地力の成ってる相手にはそんな搦め手は通用しない」
「今のお話であたしの修行欲が燃えてきたわ! ねぇ、秋芳君。やっぱり少し――」
 その時京子の携帯電話がメールの受信を知らせる軽快な音を鳴らした。
「……天馬からだわ、珍しいわね」
「む、俺にも天馬からだ」
 
 メールの内容を確認するにつれ京子の眉間にゆっくり、ゆっくりと皺がよっていく。

「……なによ、これ」

 長い文面に続いて何枚かの写真が添付されている。様々な角度から撮られた城の模型。それらを一応すべて目を通し――。

「……ふ〜ん……」

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