Side Story
少女怪盗と仮面の神父 49
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心底不愉快でしょうよ! いい気味だわ!! でも、止めてあげない!! だって、それこそが人間社会に対する私達の「報復」だから!」
精々美味しくない虫を咀嚼しながら「アリガトウゴザイマス」と涙目で呻けばよろしい!!
あーっはっはっはっはっ!!! っげほ、げほ!
アーレスト「………………」
エルーラン王子「………………」
イオーネ「………………」
慣れない高笑いと咽る音が風に流された後、またしても火だけがジジッと鳴いた。
「あ、ぁーっ、んんんっ! ……ん。良し。……とまぁ、それだけ言えれば個人的に満足なので。ご清聴ありがとうございました。王都で刑期を終えたら、アルフィンの守護をよろしくです。幾らあの子が天下一可愛いからって、誘拐なんぞ二度としないよーに! ちゃあんと見てるからね? では、お元気で! 行きましょ、お父様」
「って、お前な」
エルーラン王子の、燭台を持ってないほうの腕を引っ張り、上階へ続く階段に足先を向ける。と
「ぁいた!?」
硬い何かが側頭部を直撃して跳ね返り、足元に転がった。
「んもう、なに……、これ?」
手に取って掬い上げたのは、薄い暗闇の中でも一目で高級品と判る銀色のロケットペンダント。表面に細やかな線で何らかの花の絵が彫られている。
「マーガレット、か。マルペール子爵の母親がその花と同じ名前だったな」
パチッと音を立てて蓋を開くと、十代半ばと思われる金髪の少女が赤いカーテンを背負って椅子に座っていた。目の色が左右不揃いでアルフィンとよく似た風貌だが、雰囲気が全く違う。
アルフィンの笑顔は、こんなに優しく穏やかではない。
「……アルフィンに渡せって意味?」
投げて寄越したイオーネを振り返るが、彼女は既にベッドの上で布団に包まっていた。
暫く無言で視線を送ってみても、顔は石壁に向けたまま此方を見ようとしない。
「ふむ。どうしましょう。勝手に渡しちゃって大丈夫ですかね、お父様」
「あー……バーデルでの持ち主はこの世の住民じゃなくなってるし、マルペールの奴は親が遺した財産の管理権を全部国に移してるし。問題無いんじゃないか?」
今のアルフィンに必要があるとは思えないが。とは、父子の心の中だけで呟いておく。
「分かった。明日までに渡しておくね。さ……」
さよなら、イオーネ。
そう言いかけて、唇を閉ざす。
さよならじゃない。どんな形であれ、彼女との再会の日も必ずやって来る。
なら、この場面に相応しい言葉は。
「……ありがとう。またね、イオーネ」
ロケットペンダントを胸に抱え、元怪盗と神父と第二王子は階段を上って行く。
きっと死んでも分かり合えない女性の背中は、燭台の灯りが完全に消え去るまで、ピクリとも動かな
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