Side Story
少女怪盗と仮面の神父 49
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たのは、恐らくバーデル国内ではイオーネただ一人。
王族や貴族が少女に関心を持って余計な手出しさえしなければ、何も知らない商人達は少女から買い取った品物の売買を続けるだろう。結果、イオーネの元へ義賊に関するより多くの情報を搬送してくれる。
だからこそ、前の首領を殺して組織を乗っ取り、国境付近で商人達の口を封じていた。
両国の敵愾心を最も効果的に煽る為、確実に手が届くと確信を得るまでは、バーデル軍にも隠す必要があったのだ。
イオーネ自身の情報も、ミートリッテの情報も。
「……どうして、こんな世界、なんだろうね」
隙間に両手を入れて、成人男性の手首並みに太い鉄格子を掴む。
額を寄せても音を立てない鉄の境界線は、見た目以上に頑強だ。丸腰のイオーネには決して破れない。
その事実で得られたのは安心ではなく、悲しみだった。
「人間は、殊更需要が高いものに集るんだよ。需要があるから供給が続く。需要が無ければ供給されないの。昔から何度も何度も莫迦げていると……汚らわしいと言われているのに結局繰り返されるってことは、何処かの誰かが自分の欲求を正当化して満たす為に、需要とかいうふざけた価値観を散撒いてるんだよ。弱者にはそうするしか生き延びる術が無いんだって先入観を付与してね」
足元に水滴が落ちる。一つ、二つと落ちては弾けるそれが自分の涙だと解っても、他人事みたいに遠く感じた。アルフィンと離れたハウィスの世界も、こんな感覚だったのだろうか。
「……けど、実際はどう? 自分の体が在るのなら、物を見て聴いて考えて作り出す頭も手足も残ってるでしょう。自分の体が生きているのなら、地面も存在してるでしょう。地面が在って自分も在るなら、川も海も山も植物も動物も存在しているでしょう。それらが在るなら、空も大気も存在しているでしょう。空があるなら陽光が照らし、風が吹き、雲を運び、雨を降らせもするでしょう。本当は、性を利用しなくても生きる為の術なんか幾らでもある筈なの。ただ、それらが自分だけの物ではないというだけ。資源の保護を名目に、身勝手な所有欲と独占欲で区分けして、勝手な価値を押し付けて、対価を要求しながら、一部の人間にのみ都合が良いように配分し、都合が悪い相手には罰と称した暴力を与えて無理矢理黙らせる。奪われそうになったら、手に入らないと思ったら、自分達の手で汚し、壊す。他を顧みない、そんな奴らの所為で、多くの生物が目の前に在るその日一日を生きる為の糧すら得られないだけなの」
イオーネは動かない。ただ じっとミートリッテを見ている。
「山を平らにしても尚、土の一欠片まで根こそぎ食わなきゃ気が済まない! って大食漢が何万人と居る訳でもないんだし、乱獲に因る枯渇が心配だって言うなら、単純に漁場範囲や狩猟区域を設定して、一人当たりの獲量を個
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