Side Story
少女怪盗と仮面の神父 49
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めんなさい。ミートリッテは今、席を外してるの。殿下と話があるんですって。私が代わりに作るわね」
「私も、お手伝いして良いですか?」
「! ……ええ、お願いするわ。一緒に作りましょうね……アルフィン」
それは、仲間の無事と回復を喜ぶ宴。
再会した同朋の旅立ちを祝う宴。
家族との別れを惜しむ宴。
けれど、主賓の一人でありながら料理人、という不思議な大仕事に区切りをつけたミートリッテは、盛り上がる人の波をこっそり抜け出し、村外に在る騎士達の隠し拠点へと案内されていた。
ひんやりした空気に包まれている石造りの狭い地下通路で、腕一本も通せない黒い鉄格子の正面に立つ。右隣には燭台を持つ神父姿のアーレスト。左隣には同じく燭台を持つ村人姿のエルーラン王子が並ぶ。
「イオーネ」
「……」
境の向こうで簡素なパイプベッドに腰掛けている村人姿の女性は、何も言わず何もせず、ただただ此方を睨み付けている。
正確には、何も言わないのではなく「何も言えない」。桃の果汁を使った暗示によって、声が出せない状態にされていた。
返事ができないと知っていて呼び掛けたのは、これから並べる言葉に彼女の意識を引き付ける為だ。
「話は全部聴いたよ。あなたが元はシアルーン男爵家当主に引き取られ、ウェミアさんとは姉妹のように育てられていた事。バーデルの暗殺組織に拾われた後、どんな暗殺術を学んで、どんな経路でシャムロックの情報を掴んだのか。正直、あなたがエルーラン王子に斬られたあの時、暗殺者のクセにどうして人前に出てきたんだろう、莫迦だなぁって思ったよ。でも、ああするしか術が無かったんだね。あなたはどうしようもなく……『女性』だったから」
簡単な話だ。
イオーネが殺したバーデルの貴族は、バーデルの王族にも疎ましく思われていた。
王族の暗部に相当する暗殺組織は、彼の貴族を暗殺するつもりで屋敷に忍び込み、意図せぬ殺害現場を目撃した。
手柄を横取りされたと雇い主に知られるのは面白くないし、標的の立場を考えると諸々の後処理も非常に面倒臭い。それに、貴族を殺した女はどう見てもアルスエルナ人だ。バーデル人が嫌い、憎み、見下す、アルスエルナの「女」。拾って仕込めば使い物になる。
果たして彼女は前首領の囲われ者となり、幾人もの「男」の心臓に短い刃を突き立てる女暗殺者となった。
標的に選ばれる「男」は基本、バーデルの王族が邪魔と見做した有力者ばかり。当然、屋敷には商人も出入りする。
さていつ手を下そうかと逢瀬を重ねていれば、高価な品物を手放す哀れな他国の少女の話を聴く機会も、まるで必然であったかのように前触れ無く訪れた。
その時点で新たな義賊の存在に気付き、その活動がアルスエルナにどんな影響を与えるかを正しく理解でき
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