Side Story
少女怪盗と仮面の神父 49
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いでいること」
「「「簡単でしょ?」」」
ドッ……オオオーーォォン……
一際大きく、派手な花が月を飾る。
村全体を揺るがす大迫力に、拍手喝采が沸き起こった。
三人分の熱に纏わりつかれた体の震えがどんどん大きくなり……
「……ぁぁああああ、もーーーーーーぅっ!
忘れるわけないでしょぉおおおおお!!
みんな大好きだよ、ばあああかあああああ!!」
胸に収まり切らなかった想いが天を貫く。
「だあれが莫迦よ、誰が!」
「俺も大好きだぜ、ミートリッテー! お酌してー」
「アンタは飲みすぎだよ! 真っ赤な顔して、子供に何言ってんだい!」
「ほらもう、泣かない泣かない。これ飲んで落ち着きな?」
「あ! ダメよ、ミートリッテ! それはお酒ーっ!」
花火と笑い声と、そして涙声が、波の音と一緒になって温かい旋律を奏でている。
(こんな素敵な音、忘れられるワケがない)
ネアウィック村で過ごした七年間、良い事も悪い事もたくさんしてきた。楽しい事も嬉しい事も、辛くて悲しい事も、数え切れないほど経験させてもらった。よもや一生分の幸運を使い果たしたのではと心配になるくらいの幸せを与えられた。
(嫌だなぁ、これ。生きてる間に返し切れる自信が無いんだけど)
明日の朝、此処を旅立つ。今後戻って来る機会があるかどうかも判らない、遠く長い旅に出る。今度は自分が、みんなを幸せにする為。誰かにこの手を差し出す為に。
(……やれるだけ、やってみるしかない、か)
規則性が無い音楽の中で、子供よりも子供っぽく泣き喚きながら、ぼやけて歪んだ月を見上げる。
ふと。
白い羽根が一枚ふわりと舞い降りて、風に攫われていった。
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